天使、女神様に出会う
「うぅ……ぐすん」
城で読んだ物語は嘘ばっかりだったんだ!全力で力をぶつけ合ったら認め合って友達になるんじゃないのかよぅ!
あのあと説明会にも参加し「では明日またこちらにいらして下さい、冒険者ランクをお伝えしますので」と受付嬢の人に言われ返事もしたが、スッキリしないまま帰った。
食堂でいつの間にか注文していたご飯を待っている間、とぼとぼ歩いて帰っていった試験官のことをずっと考えていた。
あの雰囲気は普通ではない、負けたことが余程ショックだったのだろう。
「うーん……負ければ良かったのかなぁ……でも手を抜いたら怒りそうな人だったし……」
「手なんて抜いてたら一生許さなかったし嫌いになってたわね」
「だよね……えっ?試験官さん!?」
いつの間にか席には女性…というか試験官が座っていた。
「試験官さんって…そういえば名乗ってなかったわね、私はルーティ。試験官は依頼された期間を過ぎたからもうやってないの、名前で呼んで」
「えっ、あ、うん、ルーティ、さん」
しどろもどろに返事をするとルーティさんはくすっと笑う、女神様みたいに可愛い。
「ふふっ……まぁ最初はさん付けでもいいわ。それと貴女の名前は受付嬢に聞いたわよ、よろしくねユニ」
「は、はい。…あれ?よろしく?というかなんでここに」
「あーもしかして私が落ち込んでたから気にしてるの?もう大丈夫よ。あとここにいるのはユニがここにいるからね」
さっきまでのクレイジーな印象とはちょっと違い話し方は普通のお姉さんって感じだ。黒髪のツインテールのせいで見た目が幼く見えるが歳上だろうか。
あと何か嬉しい言葉が聞こえたような?
「私が、いるから?」
「そう、最近ソロの限界を感じていたのよ私。貴女まだパーティとかも組んでないでしょ?どう?一緒に組まない?」
ルーティさんはニコっと微笑んでくれる。
ぜったいこの人女神様だぁ……!
「うっ……えっぐ……」
「な、なんで泣き始めるのよ!」
「だっで……あだじぜったい……き、きらぎ……ぎらぁ……ぎらわれだっでぇ……っ!」
感情が溢れてくるせいで口が上手く動いてくれない、認め合って友達になるルートじゃなかったので嫌われたと思っていたのだ。
「えぇ!?なんでそうなるのよ……うーん……ユニのことはまぁ、好きな方よ!……はい、で?パーティーは組むの?」
ルーティさんは照れたのか頬を赤く染め、ちょっと早口にそう言った。
「ぐみまずっ!あぁ……女神さまだぁ……女神さまぁ……」
「ちょっ!汚い抱きつくなっ!」
「ぐふふ〜……」
ルーティさんに抱きつき頬ずりする、いい匂いがしたので涙も止まっている。女神様に抱きつけるなんて女の子になってからいい事ばかりだ。
「ったくもう……てかあんた早く食べないとそれ冷めてるわよ」
「それ?あっ」
いつの間にか私の目の前にはゴブリン煮込みが届いていた、注文する時もぼーっとしていたとは言えどうしてゴブリン…。
私が死んだ目で冷めたゴブリン煮込みを食べていると、ルーティさんが「そういえば」と手を叩く。
「ユニ、アンタあの雷の魔法どうやって私に当てたのか教えなさいよ!」
「あ、いいですよ」
そしてユニは解説を始める。
▲▲△△▼▼▽▽
実はあのユニが防戦一方な展開になっていた時、ユニは別の事に集中していた。
(ゆっくり…少しずつ…魔力をアイテムボックスに)
そう、魔力を少しずつアイテムボックスに『収納』していたのだった。
魔法を使った後少しの間体が動かなくなるのは、身体の中を巡っている魔力が『急激』に減るからである。
それで身体がびっくりし一時的に動かなくなるのだが、軽い魔法を使う程度の魔力がじわじわ無くなっていく分には何も問題は起きない。
(こんな実体の無いものでも収納できるのかわからなかったけど…これならいける!)
今の自分ではフェイントは見抜けない、全部防ぐつもりで魔力を『収納』する量にも気を付ける。
(終わった!)
いつ致命傷を貰うかわからない絶望的な状況を耐えきりなんとか充分な量の魔力を『収納』した所で、ルーティに「バレバレだぜ」と指摘された。
(今しかない!)
そしてユニは雷閃をルーティの顔に向かって放ち、本来であれば生じる隙を消すためアイテムボックスから魔力を取り出す。
それで動くようになるかはやってみるまでわからなかったが、ユニはこの賭けに勝った。
そして大振りになったルーティへ、全力の『雷閃』を叩き込んだのであった。
▲▲△△▼▼▽▽
こんな感じだ。
「『アイテムボックス』でそんなこと出来るなんて聞いたことないわよ…まぁ性能には個人差があるらしいからアンタのはちょっと特殊なのかもね」
「そうなんですか?」
「そうよ、にしてもそっかぁ…それは予想出来なかったわ…それで?」
「それで?とは?」
「あんな上位魔法を最後まで隠してたアンタのことだしまだ何か隠してるんでしょ?それは教えてくれないの?」
「あ、実は『ブラウ「ちょっと待った!」」
ブラウザバックについて話そうとするとルーティさんが大声を出して遮られる。
「ここで聞いた私もバカだけどなんでここで言っちゃうのよ!切り札ってのは生命線なんだからそんな簡単に言っちゃダメなの!部屋行くわよ!」
「あ……」
冒険者にとっては切り札を用意するのは当たり前である、いつどこの誰から恨みを買い狙われるかわからない世界だ、こんな人の多い場所で話すことではなかった。
「私も『切り札を教えてあげる』わ、早く行くわよ」
「あ……はい!」
切り札を教え合うというのは『仲間』にしかしない行為である。
ユニは幸せのゴブリン煮込みを一気にかき込むのであった。
▲▲△△▼▼▽▽
「その『ブラウザバック』がどんな意味か分かんないけど、致命傷も『戻せる』なら攻撃を避ける意味なんて無いじゃない!」
「……あっ!」
その後ユニはこの魔法を生かして特攻戦法を試して見たのだが、痛みに耐えられなくてトラウマになりかけたのであった。
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