なか 5
私がドッペさん…田沼さんと出会ったのは、学生時代の秋だった。まあ、まだ学生時代どころか今の高校卒業すらしてないんだけど。
その日は特に眠たくて、授業内容に興味がなくて、解放まであと20分というところで友達の話を思い出していた。
『この世界にはそっくりさんが3人!んで、そのうち1人がドッペルゲンガー!ならハズレは3分の1だね』
『双子だったら双子のドッペルゲンガーが出るのかな?』
『てか双子ならドッペルごっこできそう。片方ドッペルゲンガーで片方逃げる役で、タッチされたら交代みたいな』
なにその鬼ごっこ。
おい、話が双子にそれとっとるぞ…。
帰り道。
スクールバックがずれるずれる。それもこれも今日もらった課題のせいだ。カバンの重み体感3割増し。
はあ、右肩の筋肉だけムキムキだったらなあ。 そすればなんかこう、エイヤっ!って感じで歩くたんびに紐戻せるのに。ついでに課題も粉砕できるかな。
そしてまた思い返すのは友達の言葉。
『そういや、先週の土曜ってうちと一緒に飯食べにいっとったよね?』
『ああいや、なんかうちの妹が姉ちゃんの友達みたよーって。可笑しいよね、4駅離れた場所で目撃されとるよ』
挙げられた駅の名前はあまり馴染みのないやつで、ほら祭りとかでちょっと顔出す程度、みたいな。確か神社があるんやっけ。
あとなにあるのかな、と携帯いじると図書館発見。いやさっき聞いた。目撃された場所やもの。あとは、パン屋さんとラーメン屋さんとオムライス屋さんくらいか。
…たまには気分転換に行ってみるのもいいかもしれない。家あんま集中できないし、さっさと荷物軽くしようかな。