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じゅうじゅうといい音が部屋を包み込む。窓を開けてエアコンと扇風機。おっとサボり発見。
「こらクッキー摘ままないの。これのあと2回はするんだから。実質ひとりでワンプレートだよ、食べきれるの?」
「だいじょーぶ、へーきへーき」彼女はクッキーを食べ終えて薬指でウェットティッシュのふたを開けようとして「あたしの分もたぬちゃんが食べてくれるから」それじゃ開かなくて結局親指で開ける。
「田沼さん…ごめんね。無理しなくていいから。嫌やったら残してもいいから」
明日レンチンすればいいし、と私は向かいに座る田沼さんに声をかけると、こくりとうなずきで返事が来る。
やはり私と瓜二つな顔で、ミディアムロングな黒髪に、口元にはマスク。不慣れなのか、少し焦った雰囲気でたこ焼きをひっくり返している。
彼女こそが、私たち二人を繋げてくれた、少しはかなげなドッペルゲンガー。
通称、ドッペさん。
こころの中でね。