表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
34/36

29話 蒼と唯2

 日當瀬先輩を担いでアウトレットモールを後にした僕は九尾に案内されるがままに先輩の家に行く。先輩の家はアウトレットモールからそう離れておらず、20分ぐらいで着いてしまった。

 「でか……」

 僕は先輩の家があるマンションを見上げてそうつぶやくと、九尾と百鬼夜行はそそくさとエントランスに行き、鍵付きの自動ドアを解錠し入っていく。先に行ってしまう2人を僕はドアが閉まる前に急いで入る。

 エントランスを抜け、エレベーターに行くと既に先輩の部屋がある階のボタンを押した九尾たちが待ってた。僕は明かりのついたボタンを見て驚愕した。

 (15階建てのマンションで先輩の部屋が15階って、どんだけすごいんだよ)

 僕が驚いているのに気が付いたのか九尾は得意げに「最上階は1Fすべてがご主人様の部屋です。家賃等はご主人様の報酬から支払われているから、なんか申し訳なく思うよ」と言った。

 僕からすれば、眷属は主の下僕であるわけだから主がお金とか出すのは当たり前だと思う。まぁ、そんなことを思っていても、実際お金を払っているのは主である天邪鬼ではなく眷属の僕なんだけど……

 そうこうしているうちに、エレベーターは15階に着いた。扉が開くと目の前には玄関の扉があった。

 九尾に玄関を開けてもらい、僕はすぐさまリビングに行き先輩をソファーに寝かせる。

 「先輩はここでいいのか?」

 「今のところはそこでいい。後ほど、私が寝室まで連れて行くから」

 「わかった。なぁ、何か僕にできることはないか?」

 僕が聞くと九尾は少し考えてから「そうだな~夜行ちゃんとご主人様用にご飯を作ってほしい」とそれだけ告げると、先輩をお姫様抱っこし寝室だと思われる場所に行ってしまった。

 部屋に残った百鬼夜行に先輩の嫌いな食べ物やアレルギーを聞く。すると、嫌いな食べ物は無くアレルギーも無いとわかった。料理する側からすると、とても嬉しかった。

 僕はキッチンで手を洗ってから炊飯器に残っていたご飯を一合だけ取り出し鍋に移す。そこに米が浸るぐらいの水を入れ、火を中火でつける。その間に、百鬼夜行に出してもらった小ねぎを切っておく。そして、最後に使う卵も溶いておく。

 小ねぎとは、青ネギを若取りとまり早めに収穫した物のことを言うらしい。

 (ねぎって、たくさんの種類があるからわかりにくいんだよなぁ。全部青ネギでいいのに……)

 僕が頭の中で愚痴っていると、お鍋の中の米にとろみがついてきたため塩を適量加え、強火にする。それで、沸騰したら溶いておいた卵を回し入れる。あらかた卵に火が通ったらお椀に盛り、先ほど切っておいた小ねぎをのせれば卵粥の完成。

 僕がおかゆを作り上げたと同時にキッチンに百鬼夜行が入ってきたかと思えば、先輩の寝室の場所を教えてくれた。自分で運んでいけと言うことらしい。 

 そういうことで、お盆におかゆと水とスプーンを乗せ寝室に向かう。


 先輩の寝室は普通の家の寝室とは違っていた。

 通常の寝室ならシングルベッドが置いてあるはずなんだが、この寝室には何故にかキングサイズのベッドが置いてあった。

 僕は深く考えないことにし、ベッドに横になっている先輩の横で看病している九尾にお盆を渡し部屋を出ていこうとすると九尾に呼び止められた。

 「どうした?」

 「お前を殺したご主人様を助けるの?」

 「う~ん、特に理由もないかな?」

 「そんなはずない。お前は少しでも、ご主人様のことを憎んだりしてないの?」

 「憎んでないよ。だって先輩は妖怪を倒すのが仕事だろ。それなら、僕が殺されたりするのはしょうがないことだと思う。だから、僕は憎まない」

 僕がそういうと、九尾はどこか安心した表情をした。

 「そうか、ありがとうね。ほら、風邪がうつってはいけないからリビングに行ってて」

 「わかった」

 寝室を後にした。リビングに行くとソファーで百鬼夜行が寝ていた。しかも、テレビをつけっぱなしにして。

 「布団も何も掛けないで寝て、風邪ひくだろ。……ん?妖怪って、風邪ひくのか?」

 疑問に思った僕は帰宅するのを止め、食卓の椅子に座って寝室から九尾が出てくるのを待つことにした。

 

 20分後……

 九尾はお盆を持って寝室が出てきた。その姿はアウトレットモールにいた時と大きく変わっており、狐の耳と尻尾が生えていた。

 「先輩は?」

 「ご主人様なら寝ているよ。それと、伝言だ。『お粥、おいしかった』だって」

 「それなら、よかった。なぁ、1つ聞いていいか?」

 「なんですか?」

 「妖怪って、風邪ひくの?」

 「はい、ひきますよ。インフルエンザにもかかりますよ」

 「マジか……」

 「マジです」

 (日本の病気、どんだけ強力なんだよ!人間にとどまらず妖怪にも感染するってどんなだよ!……僕も気を付けないと)

 

 僕は九尾と洗い物をしてから自宅に帰ることにした。

 マンションから出ると、辺りは暗くなり始めていた。

 「時間が経つのは早いな。もう夕方か……」

 自宅に着くと、机の上に置手紙があった。

 そこには「実家に帰らせていただきます」の文字が。僕は漫画に影響されて遊んでいるだけだと思い、夕里に電話したら「天ちゃんなら、家にいるよ。替わる?」と思った通りの返答が来た。僕は「大丈夫。ありがとう」と言い、電話を切ってベッドに寝転がる。

 「はぁ~今日は疲れた。にしても先輩の胸、柔らかかったな~いかんいかん、夜まではまだ時間あるし自重しないと」

 僕はそのまま、意識を落とした。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ