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あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
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23話 狗神と九尾1

 僕と夕里が恋人になった翌日の教室。ある人物は落ち着きがなかった。まるで、昨日まであった自分の物が今日来てみると無くなっていたような感じだった。そして、そいつの関係者も慌てていた。

 僕が声を掛けると、そいつは昨夜泣いたのだろうか目が赤く腫れていた。

 「どうした?2人揃って慌ただしいな。何かあったのか?」

 「そうなんだよ~百鬼夜行が昨日からいないんだよ。部屋にもいないし、ここ付近も探したけどいないんだよ」

 (確か、百鬼夜行ってグループの元締めだったよな。そんな偉い奴が急にいなくなるっておかしいことだ)

 僕は百鬼夜行を探している七五三田を人気のいない所まで連れていく。理由としては、ただ一つ。クラスの皆には笙が見えていないことから、僕が笙からの話を聞けないからだ。

 「それで、百鬼夜行は何時ごろからいないんだ?」

 「俺が帰って来た時はまだいたけど、夕方頃から見てない」

 「私はそもそも、百鬼夜行様がどのような人なのか知らないので今は何とも……」

 「ん?どういうことだ?百鬼夜行の姿が分からない?それじゃあ、探しようがないんじゃないか?」

 「いや、俺は知っているが他の百鬼夜行メンバーは誰一人として百鬼夜行の正体を知っている奴がいない。あいつは――」

 七五三田が詳しく話そうとすると、笙が割って入って来たが七五三田が「他の奴らには話すなよ。特に大峯の野郎には言うなよ。俺が殺されちまう」と言うと、笙が話を中断したことを詫び僕達と少し距離をとった。

 「百鬼夜行は主以外の奴と会うと、能力で別人に見えるようにする。この能力を使うことから殲滅隊員から『数多の仮面』と言われているが気にしないでくれ。そして、俺たち殲滅隊員には確か週替わりだったかな?ランキングがあるんだ。そのランキングは一定の期間内にどれだけ妖怪を殲滅出来るかで順位が決まって来る。このランキングは人間と妖怪が入り混じっていて、百鬼夜行は妖怪の中じゃ1番の実力者だ」

 「じゃあ、百鬼夜行は殲滅しに行ったきり帰ってきてないってことか」

 「そういうことだ」

 (う~ん、殲滅隊員の中でも指折りの実力者で殲滅しに行ったきり帰ってきていないか……だとすると、どかで戦闘になったのか?だとすると、もうこの世にはいないか、はたまた誘拐されかのどっちかだな。そういえば、百鬼夜行の性別ってどっちだ?)

 僕が百鬼夜行の性別を聞くと女だと判明した。それが、何の意味を持つかと言うと特にない。

 (仮に戦闘があったとすると、相手は百鬼夜行より格上か同等かのどちらかに分かれる。しかし、不意打ちの可能性を入れると格下でも殺れる。あ~もう、分からない!)

 僕が1人で考えていると、笙がいきなり身構えた。そして、服装が改造メイド服からTシャツとショートパンツに変わっていた。

 「どうした、笙。何か来るのか?」

 「分からない。けど、私より格上なのは間違いない」

 七五三田は僕に天邪鬼たちを呼ぶように言い、廊下を駆けていった。僕はすぐに家に電話し七五三田たちの後を追いかける。


 同時刻、桂樹高校の昇降口にて……

 狐のお面ではなく犬のお面をしている男が日本刀を帯刀しながら歩いていた。

 「ここが、百鬼夜行の主と九尾の主がいるところだな。さっさと殺してやる!この狗神が直々になぁ!」

 その声は誰かが聞く前に霧散した。

 私が近くにあった階段を上がると、一組の男女に鉢合わせた。男の方はこの学校の物と思われる制服を着ているが、女の方はTシャツにショートパンツといったここの生徒ではないことが一目で伺えた。

 男は私の顔を見るが横を通るが、女の方は距離をとりファイティングポーズをとっていた。

 「あんたは、どこの妖怪?できれば、私個人からしてあまり戦いたくないけど」

 「私は強者の妖怪を封印し回っている。妖怪でありながら妖怪を捕まえている妖怪ハンターの狗神だ」

 私が自己紹介を終えると、上の階から1人の男が下りてきた。その男はひょろっとしていて私の刀であれば一発で切り落とせそうな体つきだった。

 その男は私を見るなり殴りかかってきたが、私は居合切りの要領で斬ると男はあけっなく上半身を両断されたかと思ったら、隣にいた女が男の断面を即座に合わせた。

 「な、何をしているんだ!その男は死んだ!蘇生なんて出来るわけない!」

 私が吠えると、女が「そんなことは無いですよ~この人はこの程度じゃ死にません。まぁ、サポートが必要だけど……」と言った瞬間、男の傷が消えしっかりと体がくっついていた。そして、切った際に飛び散った血はいつの間にか消えていた。

 私が「この男は何者だ!」と言おうとしたら、下にいた男が「やっぱりすげーな。鬼っていうもんは」と驚くことを言った。

 (この男が鬼!?オーラは殆ど人間だというのに……いや、よく見ると何かが混じっている。これが鬼のオーラか。面白くなってきた!)

 私は鬼が目を覚ます前に女ごと斬り殺そうと跳ぶと、鬼らを守るように火の玉が現れた。私は刀を壁に突き刺し先ほどまでいたところに戻ると、階段の先に九つの尻尾を持ち赤い扇を持っている女が立っていた。

 私はすぐに誰だかわかった。目の前にいる女は日本の中でも圧倒的強さを持っている妖怪『九尾』。まさか、こんなに早く登場するとは思ってもいなかった。

 九尾は髪の毛と同じ金色の尻尾を揺らすとどこか楽しそうに微笑んだ。

 「久しぶりだな、狗神。何百年ぶりだ?」

 「2百年ぶりだ。相変わらずお前は変わらないな」

 「いや、変わったさ。確かに、胸とか身長は変わっていないが戦闘技術は成長したぞ」

 「本当か?なら、私と手合わせをしないか?もし、お前が勝てば昨日封印した百鬼夜行を返してやる。その反対に私が勝ったら九尾、お前を頂く。これでどうだ?」

 「随分生意気なことが言えるようになったなぁ。まぁいい。私がお前なんかに負けるほど劣っていないことを見してやろう!」

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