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あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
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1話 僕の幼馴染と天邪鬼

 小鳥遊夕里たかなしゆりは僕の幼馴染だ。厳密に言えば、生まれた時からだ。しかも、巷では珍しい妖怪が見える特異体質だ。

 この特異体質は1万人に1人という確率でしか生まれない。かなりレアなものだ。

 夕里は僕と同じ16歳。茶髪で身長は160cmで明るい性格だ。そして、高校1年生としてはかなり胸は大きい方だった。そんな幼馴染は小学校も中学校もそしてこの高校でもクラスが同じだった。数に換算すると、10年間も同じクラスになったことがわかる。

 完全に腐れ縁と言える幼馴染は6限目の授業が終わると僕が座っている席に寄ってきた。


 「ねぇ蒼、今日ってこの後何か用事ある?」

 帰りのHRホームルーム前に夕里が話しかけてきた。よくあることだ。よくあると言っても週に3回とかそんな生ぬるい回数ではなく、週5と言うよくあることを通り越しての毎日あるになっているやり取りだ。

 「暇だけど、どうしたんだ?僕としてはさっさと家に帰りたいんだけど……」

 「家に帰ってもどうせゲームでしょ?ならさ、私の家で遊ばない?」

 「何を企んでいるんだ?」

 「企んでいる」に反応したのか、夕里の顔から尋常じゃないほどの汗が吹き出した。明らかに何かを企んでいるのは分かった。

 「べっ、別に何も企んでいないよ!いやだなぁ蒼は~」

 僕を叩きながら弁解しても、もう遅い。

 僕が行くか行かないか悩んでいると夕里が「お願い!」と言わんばかりに手を合わせている。

 「はぁー、わかった。付き合ってやるよ」

 結局のところ、僕が折れた。

 

 放課後……

 僕は夕里につられて夕里の家に来た。ちなみに、夕里の家は僕の家から3軒しか離れていない。

 僕はギャルゲーではお馴染みの、両親は不在で今家にいるのは主人公とヒロインの2人だけというヒロインにあんなことやこんなことが出来る展開を期待していたが、残念なことにそれは叶わなかった。家にいるのは、僕と夕里だけじゃなかった。正確には僕と夕里と僕の主である天邪鬼の三人だった。

 

 天邪鬼にはとある特殊なセンサーが付いている。

 そのセンサーは天邪鬼を軸に半径5キロの範囲で僕を探すつまり、従僕探し専用のセンサーだ。正直に言っていらない気がする。そして、そのセンサーによって夕里の家に入ろうとする僕を見つけ、一緒に入って来たということだ。

 「お邪魔します」

 玄関は平日というのもあって僕たち以外の靴が無かった。

 「蒼は先に私の部屋に行ってて、お茶持っていくから」

 「ん。わかった」

 僕は天邪鬼を連れて2階にある夕里の部屋に行く。夕里の部屋は階段を上がり、一番右端の所にある。

 僕は天邪鬼だけに聞こえるように「あんまり悪戯をするなよ」と忠告をする。一応これを言っとかないと、必ずと言っていいほど部屋を荒らす。その荒らし方は余りにもひどいものだ。一度荒らされると、二度と同じところに物を戻せなくなるような荒らされ方をする。つまり、いくつかの物が破壊されるということだ。

 夕里の部屋に入ると天邪鬼が一目散にベッドに向かってダイブした。

 「ふかふかだぁ~。スーハースーハー、うん!いい匂い」

 (匂い嗅いでる~!それは流石にダメだろ!って、ヤバイ。夕里が近づいて来てる! )

 「おい!ベッドから出てくれ!夕里が来るから」

 天邪鬼は顔を出さずに返答する。

 「わかった。今出るよ。このベッドはとてもいい匂いがするし、名残惜しいけど……」(ガチャ

 「お待たせ~お茶持ってきたよ……って何してるの!」

 夕里は僕ではなくベッドに頭を突っ込んでいる天邪鬼に視線を向けて叫んだ。

 「ねぇ、蒼。ベッドにいるの誰?まさか、彼女?」

 「そんなわけないだろ!って見えているのか!」

 驚きでしかない。妖怪であり鬼である天邪鬼を普通の人間では見ることも存在を感じ取ることも出来ないはずなのに、夕里は僕の幼馴染はしっかりと天邪鬼を見ていた。その時僕は夕里が妖怪を認識することの出来る特異体質だと知った。

 僕がそれ理解するのに少しの時間を有した。僕は考えた結果、隠してもしょうがないので夕里に天邪鬼のことを話すことにした。

 

 「へぇ~、じゃあ今は蒼の主で、蒼はその子の奴隷ということね」

 「そうだよ~!」

 「違うよ!いや、意味合い的には違くないけど違うよ!奴隷じゃなくて従僕だよ!」

 (とんでもない事をいいやがって。奴隷だと聞こえが悪いだろ!こいつ、もしや……Sか!に、しても天邪鬼は夕里と仲良くなるの早いな!鬼のくせして人間にすごくフレンドリーだな)

 「従僕」

 天邪鬼が笑顔でこっち向く。待て、この笑みは明らかに怒っている。

 「従僕、僕は君の考えていることまでわかるんだよ。天邪鬼だからね。何が『鬼のくせして人間にフレンドリーだな』だ!僕をバカにしているなぁ?いいの?不死見でも何でもない君の体が僕の鉄拳制裁によって四散するよ」

 (激おこでした。ここは謝らないと確実に死ぬ)

 僕は必殺技『土下座』を天邪鬼に繰り出す。だが……

 「何それ?まさか謝っているつもり?人間相手だと有効らしいけど、生憎僕は鬼だよそんなの効くわけないじゃん。あと、僕は怒っている時だけ逆さ言葉じゃないから。ていうか、元から逆さ言葉じゃないから」

 (もう、どうすればいいんだよ~)

 すると、夕里が……

 「2人とも!いい加減にして!なんで仲良く出来ないの?そんなに仲良く出来ないなら私が天邪鬼ちゃんを貰っちゃうよ」

 夕里は怒りながらすごいことを言った。

 「いや、それは困る。あんまり1人にさせたくないんだ」

 「なんで?あんまり悪い子に見えないよ」

 「まぁ、そうなんだけど……なんて言っても好奇心が強すぎて、いつの間にかどっかに行ってたりするんだよ」

 相変わらずベッドでゴロゴロしながら匂いを嗅いでいる天邪鬼が反論する。

 「僕はそんなことしないよ~」

 僕からしたらバレバレな嘘を平気で付きやがって、夕里が信じるだろうが。

 「ほら、そんなこと無いって」

 (信じちゃった!お前もお前だよ、まったく。……そうだ。さすがに天邪鬼はあげられないけど貸すなら……)

 「なぁ、夕里」

 「な、なに?」

 なんで緊張してんだよ。話しにくいだろう。

 「あ、天邪鬼を夕里の家に行かせても大丈夫か?」

 「別に大丈夫だけどなんで?」

 いや、もう察しもついているはずなのにわざわざ聞くなんて。

 「僕といっしょにいると喧嘩が絶えないから、気分転換にな」

 「わかったわ。天邪鬼ちゃん」

 「なんだい?」

 「これからは私の部屋に来ていいよ」

 「本当!じゃあ、これからよろしく夕里ちゃん」

 

 親離れならぬ従僕離れか……

 そういうことで天邪鬼は夕里の家に自由に出入りが可能になった。そして、しばらく夕里の家から帰って来ないのは未来の話。


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