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あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
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14話 寝坊と眼開き

眼開きは「がんびらき」と読みます

 文化祭の翌日……

 僕の1日は心地よく始まらなかった。

 布団で寝ていた僕は目が覚めると、自室のカーペットの上で寝ていた。

 僕がいたはずの布団にはベッドから落ちたのであろう天邪鬼とキャットが寝ていた。

 「どんだけ寝相悪いんだよ。人を蹴飛ばして布団を占領するって、どんな妖怪だよ」

 目が冴えてしまった僕はスマホの時計を見るとまだ3時だった。

 起きるにしてもまだ早い時間だ。僕は天邪鬼たちを踏まないように歩き、ベッドに倒れこむ。 

 ベッドにはまだほのかに女の子の匂いが残っていた。

 僕はその匂いを少し吸ってから枕に頭をつける。

 豆電球が付いてる部屋の天井を眺めていると、視界の端に何かが動いたのが見えた。

 僕は急いでその方を見ると、天邪鬼がゆらりと立ち上がりベッドに歩いてきていた。

 (あっ、これマズくね?)

 そう思った時はもう遅かった。

 ドシンッ

 僕のおなかに天邪鬼が倒れてきた。

 (あーあ。もうどうにもなんないやつだこれ)

 僕は天邪鬼が乗ったまま毛布を被り二度寝に勤しもうと思ったら、今度はキャットがベッドに乗ってきた。

 キャットは天邪鬼とは対照的に少し体が高校生よりなので、出ているところが僕の体に当たる。

 (あっ、当たってるー!)

 そう思ったのもつかの間、キャットは僕の腕にしがみついてきた。

 (な、何ーーーー!胸が!腕に胸がー!)

 僕の心は激しく乱れているが、天邪鬼が乗っているせいで動くことが出来ない。そして、僕は年頃の男の子である。言いたいことはわかるだろう?『あれ』があんなことになってしまう。

 僕はそろそろ限界を迎え2人を起こそうとした瞬間、天邪鬼が「従僕のおっきい……」と寝言を言った。

 (え?今なんて?)

 明らかにおかしい言葉が聞こえたような気がした。が、そんなことはどうでもいい。今の状況を変えないといけないため、2人に声を掛けるとすぐに起きてくれたが、眠たそうな目をしてこちらを見ている。

 「2人とも、俺にくっつくのをやめてくれ。心拍数が上がって寝れない」

 そう言った時、天邪鬼が寝落ちした。そして、キャットも落ちた。

 (こりゃあ、ダメだな。諦めるか)

 心拍数が上がりっぱなしだけど、疲れが勝ったのか眠気が襲ってきた。

 俺は2人の妖怪とくっつきながら二度寝をした。


 翌日……

 「ううん……もう朝か。何時だ?」

 眠気眼で壁掛け時計を見ると、10時を指していた。

 「!!まじか。完全に遅刻だ……こんな時間だと行く気が出てこない」

 僕は自主休校することを決め、起きようとしたら体が重くてうまく動かなかった。忘れてた、天邪鬼とキャットと一緒に寝てたことを。

 「起きろ。2人とも朝だぞ」

 僕は2人の肩を揺らして起こす。その時、僕はあることに気づく。

 キャットはノーブラだということに。

 (マジか……なんでしてないんだ?あれか!胸の形が悪くなるからか!なるほど……って!なにを考えているんだ僕は……)

 不純なことを頭から急いで消して再び起こす。今度は声だけで。

 結局起きたのは1時間後だった。最初に起きたのは意外にもキャットだった。

 「にゃあ~」と可愛い声を出したかと思ったら、僕の顔面に肉球を思いっ切りぶつけてきた。幸い爪は出てなかったので怪我はしなかったのだが、伸ばした時に揺れた胸に目がいってしまった。運がいいことにキャットは僕の視線に気づいていなかったみたいでよかった。

 キャットは腕を伸ばしたまま「おはようニャ。今何時ニャ?」

 「11時だよ。なぁ、キャット。寝てるときにさ、僕の腕にしがみついてくるの止めて欲しいんだけど……」

 「ダメニャン?」

 「ダメ」

 「なぜ?」

 「なんか、緊張して眠れない」

 その時、僕が言いたいことを察したのか顔を赤くして俯いてしまった。

 「……どうした?」

 「……なんでも無いニャ……」

 声が小さくて聞き取れず聞き返すと「この変態ニャー!」と肉球で顔を殴られた。

 僕は一瞬何が起こったのか分からず呆然としていたが、キャットを見たらわかった。

 (腕に胸が当たっていたのを気づかれたー!)

 そう思うと、こちらの顔も赤くなる。

 気まずさからか、互いに無言の時間が訪れる。

 「「………」」

 (気まずい……そうだ!天邪鬼はどうだ?)

 天邪鬼の方を見ると、身を思いっ切り開いて僕を見ていた。死体みたいに。僕はその顔に驚いて声も出なかった。

 (ヤバイ。ヤバすぎる。何?この状況。カオスすぎる)

 僕は眼開き天邪鬼からキャットの方を見ると、僕と同じように天邪鬼を見たのか固まっていた。そして、再び天邪鬼を見るとにゅるっと眼球が動き黒目が僕とキャットを交互に見ていた。

 (恐っ!気持ち悪いとしか出てこないよ、これ。流石にそろそろ起こさないと頭に残りそう……のこってるけど)

 僕は勇気を振る絞り天邪鬼を呼ぶと黒目が僕を捉えて止まった。

 (な、なんだ!今度はなんだ?)

 内心身構える僕に対して天邪鬼が声を上げて笑い出した。

 「あははは!おっかしぃ。2人とも僕の顔を見た途端固まって面白かったよ」

 天邪鬼は面白いものをみたような顔をして言う。すると、キャットが「許さないニャ!観念するニャ!」と言ったと同時に肉球が天邪鬼の顔目掛けて伸びる。

 「従僕みたいには当たらないよ!」

 すると、天邪鬼は肉球パンチを避けキャットの懐に入ると、おなかをくすぐりだした。

 「こちょこちょこちょこちょこちょこちょ」

 「ニャ、ニャはははははははは!」

 無駄に長いくすぐりに比例してキャット笑いも長かった。

 (そろそろお昼なんだよなぁ……)

 時計を見ると、あと5分ぐらいで12時になろうとしていた。

 僕はじゃれあってる猫と鬼に昼食を取ることを言うと、さっさとベッドを降りてリビングに行ってしまった。

 「まったく、ご飯のことになると早いんだからなあ……さて、午後は何しようかな?」

 この時の僕は七五三田にキャットを返すことなどすっかり忘れていた。

 


 

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