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あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
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13話 委員長と帰路

 僕が学校に戻ると、自分のクラスはもう片付け始めていた。

 どうやら売り切ったらしい。僕に気付いたのか委員長が駆け寄ってきた。

 「おかえり。そのぉ、酒吞童子ちゃんはどうだった?無事?」

 「無事だったよ。自宅で天邪鬼と仲良く遊んでいたよ。帰りに僕の家に寄ってくれ酒吞童子を渡すから」

 委員長は「わかった」と言い、かたずけに戻っていた。

 教室を見渡すが七五三田はいなかった。クラスメイトにどこに行ったの聞いてみたが、誰も何処にいるのか知らなかった。

 天邪鬼が居ない今、七五三田に合うのは得策とは言えない。僕はかたずけし始めた。


 かたずけが終わり下校の時間になり帰ろうとしたら、委員長が昇降口で待っていた。

 「じゃあ、行きましょ」

 そう言うと、歩き出してしまった。僕は急いで隣に行く。

 この時間に下校する生徒はいつもと比べて少なかった。

 僕が通っている高校は毎年恒例の後夜祭があるのだが、参加する生徒は全校生徒の中でも7割ぐらいだ。

 後夜祭ではカラオケ大会や一発芸の披露会が行われるのだが、そんなのはバーやスナックでも出来る。行ったことはないけど……

 そんなわけど、僕たちは自宅への帰路に立っていた。

 「ねぇ、蒼君。この住宅街ってこんなに閑散としているの?少し薄気味悪くない?」

 言われて気付いた。あの時みたいに住宅街には人の気配が感じられなかった。

 「委員長。少し早く歩きません?個人的に、この感じはヤバいです」

 僕は異形が来るのかと思うと寒気がしてきた。振り返ってみるが誰もいなかった。

 僕はホッとし急いで家に向かった。


 家に着き、リビングを見るが3人はいなかった。もしやと思い自室に向かうと、仲良く3人で僕のベットで寝ていた。

 とりあえず委員長を適当な場所に座らせ僕はお茶を取りにリビングに行く。

 「たくっ、仲良くなるの早いな。僕は一生かかっても無理だよ」

 そんな愚痴を言いながらお茶を自室まで運ぶ。

 「おまたせ。はい、お茶」

 「あ、ありがとう。なんか、不思議な光景だね、鬼と猫が仲良く寝ているなんて」

 「確かに。普通だと有り得ない光景だ。ねぇ、委員長。同じ境遇の人なんて滅多にいないからさ、連絡先でも交換しておこうよ」

 「そうだね。何かあったときはよろしくね」

 こうして僕は母親以外の女性の連絡先を手に入れた。因みに2つ目。

 「天邪鬼たちを起こそうか?もう6時だし」

 「ううん。まだいいよ。ねぇ今日、泊ってもいいかな?」

 「え?僕の家に?」

 「そうだけど。ダメ、かな?」

 委員長は首を傾げ上目遣いで聞いてきた。

 (可愛い……)

 僕は蒸発しかけていた理性をなんとか取り戻すことに成功した。

 「だ、ダメだよ。年頃の女の子がクラスメイトと言えど男の人の家に泊まるなんて、まだ早いと思う」

 「じゃあ、私がもう少し成長したらいいの?」

 再び上目遣いで聞いてくる委員長に僕の理性は完全に理性が蒸発した。

 我ながら、弱い男だとつくづく思う。

 「いいよ。いつでもいいよ!」

 僕の返答が委員長にとって想定外だったのか目をパチクリしている。

 「いつでもねぇ~わかった。じゃあ、冬休みの時に来るね」

 委員長は意味ありげに笑うとさらっと約束させられてしまった。

 僕が断る間もなく委員長は酒吞童子をおんぶし、ドアの前に行った。

 「今日はありがとうね。じゃあ、おやすみなさい」

 それだけ言って委員長は帰っていた。

 僕はまだ寝ている天邪鬼とキャットを一瞥して、隣の部屋から布団を引っ張っりだしてくる。

 この布団は昔から使っている物なんだけど、新品みたいに白い。

 布団をベッドの横に敷く。

 「なんだろう……自分の家なのにお泊りに来たみたいだ。まぁ、いっか。こういうのもたまにはいいよな」

 僕は寝巻に着替えて、今日は寝ることにした。

 

 

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