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あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
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9話 猫又と文化祭

 今日は文化祭当日。天気は快晴。僕が起きるとベッドの横に珍しいことに天邪鬼が居た。

 「おはよう、天邪鬼。どうしたんだ僕の部屋で寝て」

 「おはよう、従僕。えっと、今日は文化祭とか言うのがあるんでしょ。ぼ、僕もそれに行きたい。なんちゃって」

 天邪鬼は少し目を伏せて言った。

 「いいんじゃないか?学校には夕里や七五三田がいるし」

 「本当か!わーい!楽しみだなぁ」

 許可を出した途端、子供のようにはしゃぐ天邪鬼。

 僕は「やれやれ」と思いながら、制服に着替える。時間は八時を回っていた。

 

 「行ってきます」

 僕は誰もいない家に言い、学校に向かう。天邪鬼は僕にしっかり付いてきている。

 歩いていると前方に夕里を見つけた。

 「おはよう」 

 「えっ!お、おはよう」

 僕が後ろから声をかけたからだろうか、夕里はびっくりしながら挨拶をする。

 「あれ?なんでここに天邪鬼ちゃんが」

 「文化祭に行ってみたいんだって。まぁ、学校には七五三田もいるし問題ないだろ」

 「なんで七五三田君が出てくるの?」

 口が滑った。そいえば夕里には七五三田のことを話していなかった。

 「えっとな、夕里。七五三田は俺と同じで妖怪を持っているんだ、だから」

 「そうなんだ!それなら安心だね。それじゃあ、行こうか」

 夕里は少し素っ気ない返事をして歩き出してしまった。

 「何か怒らしちまったかな?」

 「僕からしたら、仲間外れにされた感じがして『むすっ』てしてるんだと思うよ」

 「そうなのか?」

 「そうだと思うよ。僕だって女の子だし」

 「え?マジで、女の子なの?」

 たまげた。まさか天邪鬼が女の子だなんて……

 「は?何を言っているんだい?明らかに女の子でしょ!夕里ちゃんは初対面でもわかったよ!そんなだから従僕は夕里ちゃんを怒らすんだよ。まったく」

 「すいません。以後気を付けます」

 「以後じゃなくて永遠にだよ!」

 めちゃくちゃ怒られた。僕はこれから女子の心を勉強していきます。

 

 学校にて……

 「わぁー夕里ちゃん可愛い!家にいて欲しい感じがする」

 「そ、そうかなぁ?」

 「そうだよ!」

 教室の奥から女子が夕里を褒め称えているであろう声が聞こえる。

 ちなみに僕も着替え中の女子と同じ空間にいる。それは他の男子もだ。教室にはカーテンで作られた簡単なバリケードだけで区切られている。布が擦れる音が妙にエロい。

 「男子も着替えられたー?」

 「あぁ着替えたぞ」

 委員長の酒匂鈴さかわりんがこちらに声をかけてきた。そしてそれに答えたのは、先日転校してきたばかりの七五三田だ。

 「じゃあ、開けるよ」

 酒匂がそう言うと、カーテンが一気に開けられメイド服に身を包んだ女子が現れた。

 その瞬間、男子からは熱狂的な声が上がる。

 夕里が僕の所に近づいてくる。

 「蒼、似合っているかな?」

 「に、似合っている。うん。すごく似合っている」

 僕がそう言うと夕里の顔が赤くなる。

 「あら、蒼は小鳥遊さんを口説いているのかな?」 

 それを見ていたであろう七五三田がおちょくってきた。

 「な!ち、違うし口説いてないし。変な勘違いをすんな」

 「そうか?なら、すまなかったよ。あと、話がある屋上に来てくれ」

 「わかった」

 話とはなんだろうか、まぁ察しは付いているけど。

 

 屋上にて……

 「話ってなんだ?」

 「お前、天邪鬼を連れてきているだろ」

 やはり知っていたか。

 「そうだけどどうした?」

 「頼みがある。百鬼夜行の中でも文化祭に興味がある奴がいてな、天邪鬼と一緒に回って欲しいんだ」

 「で、妖怪は何?」

 「『猫又』」

 七五三田が短く言うと何も無い所から尻尾が二つに分かれた猫が現れた。色からして三毛猫だろうか。

 「猫?」

 「猫じゃない。お前も知っているだろう、『猫娘』」

 「まさか、人型にでも出来るのか?」

 「当たり前だろ」

 すると突如猫又の体が光ったと思ったら、目の前に猫耳と二つに分かれた尻尾を生やした茶髪の女の子が出てきた。身長は僕より少し小さいぐらいだろうか。

 「紹介する。こいつは猫又のキャットだ」

 名前が案外普通。てか、そのまんまじゃん。ツッコまないけど。

 「よろしくニャン。で、私の相手をしてくれる子って言うのは誰なのかニャ?」

 「ちょっと待ってて、もう少しで来るはずだから」

 僕がそういった瞬間、屋上の扉が開きそこから天邪鬼が入って来た。

 「お待たせ~っ!ん?従僕、あの猫娘は誰だい?」

 「あれは七五三田が所持している百鬼夜行の一つ。『猫又』だって」

 「へぇ~また大層な者が出て来たね。で、目的はなんだい?」 

 「それは俺が言うよ。蒼の主である天邪鬼に頼みがある。聞いてくれるか?」

 天邪鬼は少し気怠そうに答える。

 「いいよ。言ってみて」

 「俺の猫又と文化祭を回ってくれないか?」

 天邪鬼は僕の顔を見て少し渋い顔をする。

 どうしたのだろうか?いつも笑顔の天邪鬼がこんな顔をするのは珍しい。

 なかなか答えない天邪鬼の代わりに僕が答える。

 「僕が二人を連れてくよ。二人だけだと何も買えないだろ」

 天邪鬼は驚いた顔でこっちを見る。

 「いいのか?従僕には夕里ちゃんがいるのに……」

 「お前もか、僕は夕里と付き合ってないから心配すんなよ。今日一日よろしく。キャット」

 「こちらこそよろしくニャン」

 こうして初めての文化祭は一人で回ることが無くなり三人で回ることになった。

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