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あの日から僕は  作者: 稲荷 里狐
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外伝1話 天邪鬼の一日

 僕は従僕の家を後にし、道路を歩いている。

 「この時間は静かだね。僕だけしかいないと錯覚しちゃうよ」

 僕がそんなことを言いながら歩いていると、どこかで聞いたことがある姿をしたのがいた。

 それは、私に向かって走ってきた。

 「え?あれって……『異形』」

 僕は恐怖からか、走っていた。

 「なんでここにいるんだよ!主は従僕といるはずなのに!あ~もう!わかったよ。あいつの主を瀕死に追い込んでやる!」

 僕は従僕が通っている私立桂樹高校に向かうことになった。

 先日も従僕が襲われてその時に殲滅しないということを七五三田印とか言う奴と約束したはずなのに、襲われている。正直に言って、異形と一対一で闘ったら確実に勝てる。だけど、こんな奴を僕の剣で切りたくない。なんか汚い感じがする。と、いうことで走っている。

 

 桂樹高校では……

 「!妖怪を見つけた」

 急に七五三田が言った。

 「どんな奴だ?」

 「えっとな……黒髪ショートで巫女服みたいなの着た少女」

 「え?それって天邪鬼だよ!お前も見ただろこの前!」

 「そうだっけ?」

 なぜか七五三田がとぼける。

 「忘れたのか?この前、僕の家に来て無害認定しただろ」

 「あっ。思い出した、そうだった。『異形』目の前の妖怪は無害認定されている妖怪だ、追うのを中止しろ」

 今のは命令だろうか?だとすると、僕も将来的にはああなるのだろうか?

 今考えただけでも怖い。

 「ごめん。『異形』にはあとで言っとく」

 「そうしてくれ」

 

 追いかけられていた天邪鬼

 「ハァ、ハァ、ハァ。いつまで追いかけるのさ!」

 いまだに異形は追いかけてくる。いつまで追いかけてくるのだろう。もう足が棒みたいだ。

 しばらく走っていると、僕を追いかけてくる異形の足が止まったかと思ったら、霧のように消えていった。

 「何だったんだ?いきなり追いかけて来たかと思ったら、急に消えていって何がしたいんだ?」

 僕は何か不安に思いながら、従僕の家に向かう。


 「ただいま~って言ってもいないんだった」

 夕里ちゃんの家に遅い時間に行くと、必ず夕里ちゃんが「おかえり!」って言ってくれてたから、癖になっていた。だけど、家には従僕の親もいない。なら、やることは一つシャワーを浴びること。

 僕はこの家に初めて来た時に一人でシャワーに入ったら、従僕の親が「ポルタ―ガイストだ!」とか騒ぎだしてしまったことがあったから、今では従僕以外の人がいない時にしかシャワーを浴びれなくなってしまった。

 僕は脱衣所で巫女服と下着を脱ぎお風呂場に入る。

 お風呂場は大人の男性3人がギリギリ入るぐらいの広さだ。

 異形との一戦があったからか、身体は汗でぐっしょぐっしょになっていた。

 お湯のノブを捻りお湯を出す。最初は水が出てきて次第にお湯になっていく。

 今は夏だが、僕には少し熱いお湯がちょうどいい。

 僕は頭から一気にお湯をかぶる。

 「ひゃー今日も暑いねー」 

 僕はそんなことを言いながらシャンプーを取り頭を洗う。

 そして、シャンプーを洗い流し、タオルにボディーソープを付けて上半身を洗ってから下半身を洗う。

 僕は自分の胸を見て思う。

 「何百年も生きいるのに、まったく育ってないなぁ」

 そう、僕の胸は全くと言っていいほど育っていない。

 僕はため息をつきながらボディーソープを洗い流す。

 僕は脱衣所からバスタオルを取り身体を拭く。

 胸の突起物がタオルに擦れてむず痒い。

 身体を拭き終わったら、夕里ちゃんから貰った下着を着け、巫女服を着ればいつも通りの僕になる。


 シャワーを浴び終えたら12時を過ぎていた。

 僕は、夕里ちゃんの部屋に戻ることにした。

 夕里ちゃんの部屋は白色がメインで、約10畳の広さだ。しかもベランダ付き。

 僕はベランダに出れる窓の横にある本棚から漫画を一冊持って、ベッドに飛び込む。

 僕が手にした漫画の表紙には、男二人が書かれていた。

 「これって、一般向けの漫画じゃないのかな?よくわからないけど。とりあえず読むか」

 僕は適当にページをめくった瞬間、思いっきり本を閉じた。と、同時に顔が赤くなっていることが分かった。

 僕が見たページには男同士が行為に勤しんでいた。生憎、僕にはその手の情報が無くて何をしているのかよくわからない。なので、僕はこの本を戻し別の本を取り出す。

 「次はなにかな?」

 新しく出した本の表紙にも男だけが描かれていた。

 「またかー!もしかしてこういう系しか持ってなかったりして?」

 僕は1つずつ本の表紙を確認していく。

 結果は、的中した。本棚にある本すべてがそういう系の本だった。

 「夕里ちゃんは、アブノーマルなのが好きなんだね」

 今朝したことは、夕里ちゃんからしたら嬉しくは無かったのかな?う~ん分からない。

 僕は本を綺麗に戻し、ベッドに倒れこむ。

 倒れこんでからすぐに今日の疲れからからか眠気が来て、寝てしまった。

 

 「ただいま。ん?天邪鬼ちゃん、寝ちゃってる」

 私は天邪鬼ちゃんを起こさないようにバッグを置き、制服を脱ぎ部屋着に着替える。

 衣服が擦れる音がしても、天邪鬼ちゃんは起きる様子が無い。どうやら熟睡しているらしい。

 「今日は何をして来たんだろう?こんなに疲れるまで……」

 そこで私は気づいた。本棚に入っている本の羅列が乱れていることに……

 「ま、まま、まさか。本棚の中身を見たの、かな?」

 私は顔が真っ青になりながらおぼつかない足取りで寝ている天邪鬼ちゃんに近づく。

 「学校の皆や蒼にだって私の趣味を知られてないのに。こうなれば記憶を消すしか……ない!」

 私は天邪鬼ちゃんの上にまたがり、頭目掛けて拳を振り落とすが、止められた。 

 よく見ると、天邪鬼ちゃんが目を開け私のパンチを右手で防いでいた。

 「夕里ちゃん?な、何をしているのかな?」

 「天邪鬼ちゃん。正直に答えてね。本棚にある本を読んだ?」

 「読んだけど、どうしたの?」

 「いやああああああああああああ!」

 「まっ、待って!」

 私は叫びながら、天邪鬼ちゃんを殴る。そして、それを全て防ぐ天邪鬼ちゃん。

 この攻防戦はあることがきっかけで終わった。

 私が殴っていると、右手に鋭い痛みを感じ見てみると、手の甲に小さな穴が開いていた。

 「い、痛い!な、なんでこんな傷が!」

 天邪鬼ちゃんを見ると、額に一対の小さな角が生えていた。

 「夕里ちゃん!ちょっと待って!」

 そう言うと天邪鬼ちゃんはスカートポケットをあさる。そして、出てきたのは液体が入った小瓶だった。

 「そ、それは何?」

 「これは万能薬。あらゆる傷も治すことが出来る。夕里ちゃん、右手を出して」

 私は右手を差し出すと、そこに小瓶の中身である万能薬を垂らされた。

 万能薬は最初は冷たかったが、徐々に熱くなり始めた。

 「我慢して。もう少しで完全回復するから」

 天邪鬼ちゃんがそう言うと、少しずつだけど傷が塞がり始めた。

 「すごい!傷が消えてく」

 

 私の手が完全回復した後……

 「ごめんなさい!」

 「謝らないでよ。僕の方が謝るべきだよ。勝手に君の物を見たりしてごめん!」

 「もう大丈夫。でも、これからは許可制にするからね」

 「わかった」

 

 僕は今日知ってしまった夕里ちゃんの隠れた趣味は他言無用となった。

 

 これにて僕の一日は終了だよ。今日はとても疲れることが多かったなぁ。まぁ、こんなこともあるさ!

 

 

 

 

 

 

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