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俺たちの監督!  作者: ぴーやま
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新入生登場か?


4月に入って、始めての部活動の日。2年生8人だけの九井野球部についに念願の新メンバーが加入する?可能性がきた。

 ダッグアウトの前の8人は新入生を待つか、練習を開始するか校舎をチラチラみながら迷っていた。

九井中学では新入生部活動歓迎会という学校行事が毎年予定されている。その行事が開催される前日から開催された日1週間後までは、体験入部という期間が設けられる。新入生はその期間、どの部活動にも同時に参加できる権利を持っている。つまり、どの部活にも一度所属してから自分にあった部活動を選ぶことができる。体験入部の期間が過ぎてからその部活に参加する生徒が正式な部員となる。そして、体験入部初日は一番興味のある部活を体験する確立が高い傾向にある。また体験初日から正式な練習までの期間、1つの部活に所属する生徒も多い。そのため、初日でどれくらいの生徒が野球部を体験してくれるのか九井野球部軍団は固唾を飲んで待っていた。なんせ、1人は入部してくれないと去年の秋同様、公式戦に出場することすらできない。


「そろそろ練習するぞ!待ってようが、練習してようが来てくれる人は来てくれるって。」


男鹿がみんなを練習開始のランニングを開始するよう先導する。新監督、秋田から仮のキャプテンを任命されてから数日しか経っていないが、男鹿のリーダーが板についてきている。

小坂孝則、部員みんなからはサカノリと呼ばれる少年はついさっきまで、「おれが外野の真髄を叩き込んでやる」とか「まずは声出しの仕方からかな」だとか一番浮ついていた様子を見せていた。しかし掌を返すように、キャプテンの号令を聞くと「さすがキャプテン!!良いこと言った!」と調子良く合いの手を入れる。

 そんな様子をみてサカノリ以外の部員はみんな苦笑いする。

 そんなサカノリは去年、野球部員の中で唯一、体験入部初日に参加していない野球部員だ。去年の今頃、サカノリの姿は九井中学人気ナンバーワン部活動のバスケットボール部にあった。

照明が、体育館の床や走り回る部員の汗で反射し、まるで光りの中でコートを駆け回る。床とバスケットボールシューズが小気味よく擦れる音が聞こえ、バスケットボールがリングを通りネットを揺らす。ザシュッと音をたてシュートを決めるとその瞬間、部員のナイシューッと歓声に似た掛け声がかかる。だから、バスケって良いよなーとサカノリが言っていたのを思い出し、同じ小学校出身のダテ、和海、鷹巣隆也、井川孝之は漠然にサカノリは野球じゃなくバスケ部に入部するのだろうと思っていた。実際に体験入部初日には野球部にはいない。





しかし、気がついたら太陽の下で白球を一緒に追いかけるサカノリの姿があった。ごく自然にいつの間にか練習に参加していたので4人は驚く隙もなかった。

「あれ?あいつ、いつからいた?」

4人は不思議そうにアイコンタクトをとる。

「おい!サカノリ!おまえいつから野球部の練習に参加してた!?」

「いやいや!けっこう最初の方からいたけど!?」

トボケている顔をしているが、少しニヤけている。確信犯だ!バスケ部に入部しかけたことをなかったことにして、あくまでも最初から野球部に存在していたとやんわり主張している!しかも、追求されないように初日からではなく、「最初の方からいた」と少しごまかしてる。4人は、あくまでもバスケ部に入部しようとしたことを隠したいサカノリの気持ちを察し、このごまかしに渋々乗っかることにした。



後日、ダテはサカノリがなぜバスケ部を断念したのか気になり、こっそりバスケ部の同級生に探りをいれた。

「そういえばサカノリって体験入部バスケに行ってなかった?」

「あー!!サカノリって孝則のことでしょ?たしかにいたよ。でも気がついたらいなくなってたな。まーでもあれじゃいなくなりたくなるわな!」


「どういうこと?」

「いやー孝則、スゲー声出すんだよ!がんばって。んで、試合形式の練習だったんだけどスゲーボールを要求すんのね!俺がシュート決めてやるって。ヘイヘイ!つって。それでスゲー呼ぶからみんな孝則にボール集めて、シュート打たすんだけどさ、全部外すのね。何本打ったろ?15本は打ったのかな。あれだけ打って外んだから心折れるよなー。」

同級生のバスケ部員はすごく遠い目をしていた。

「・・・なるほど。」ダテは笑いのネタにしようと思っていたが、バスケ部員があまりにも同情している様子だったので、少し可哀そうになってしまった。


「でもさ!足速いんじゃない?孝則。スゲー走ってたよ。うん。なんか、忍者みたいだな!急にいなくなったし!ははっ。」バスケ部員は優しいのか、馬鹿にしているのか良く分からないフォローを入れていた。





その後からだ。野球部の中でのサカノリの裏の名前は。忍者になった。


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