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監督、激昂!
「いや、家出るとき見なかったしな。いつもだいたい同じ時間になるのに。小学校の時、なにかと腹痛くなる癖あったからそれかな。今日、新しい監督と初練習だし。ん?あれ、ハチじゃない?」
グラウンドと学校の境目、野球のポジションでいうとライトの後方で半袖の大きな男と何やら話している。
「ハチと一緒にいるのって新しい監督じゃね?」
「うわっ。なんか頭摑まれてるじゃん」
「ギリ遅刻だもんな」
「怖そう。」
「身長でけーな。」
ハチと言われる少年は深々と新監督に対しお辞儀をした後、飛び跳ねるようにグラウンドの端にスポーツバッグを置き、グラウンドの外周を走り始めた。そして、新監督はダッグアウトに向かってズンズンと大きな歩幅で近づいてくる。表情はまだ遠くて確認できない。
(怒ってるよな?)
(赴任初日で怒らせちゃったよ。)
(俺たちも連帯責任かな。)
九井中学野球部のメンバーには、とてつもない緊張感が漂っていた。