嗚呼。
最後まで読んでもらえたら嬉しいです。ハイ。
これは俺のちょっとした思い出話である。
――――3年前
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「なーにー、いきなり呼びつけちゃって。今日は冬海たちと四人でガ◯トでパーティーしてたのよ! まああなたには心覚えはないでしょうけど。冬海に感謝しなさい。冬海に言われなきゃパーティーで盛り上がっていた私がここに来ることなんてなかったんだから。」
明香はとても不満そうに頬を膨らませていた。数分前、俺は明香がその誕生日であることを冬海にSNSで叱責された。急いで俺は冬海の提案通りプレゼントを買い、そのあとで明香を呼び出し、それらしいことをする算段だったのだ。
「ほら、当ててみなさい。今日は何の日だったでしょう!」
明香はイライラした口調で両手の平を向けながら答えを求めた。
「ほら、今日は明香の誕生日だろ。……だから、その、はい。プレゼント。」
俺はさっき買ったばかりの品を紙袋から取り出し、終始目を合わせないまま、プレゼントを渡した。
「ふっ、フゥーン。覚えていたのねぇー。でも急にどうしたの? 今までプレゼントなんてくれたことなかったくせに。」
明香は無意識だろうか、ちょっとだけ笑ったような、そんな気がした。
「いやその……、ほら、俺たち今は付き合ってるだろ……。だから、……、うん……。ダメ……?」
嗚呼。いつもの勢いがなくなってきてやがる。慣れないプレゼントなんてして、心が動揺している。
「いやダメじゃないけど……。ちょっとね……。ビックリしちゃってね。」
明香も慣れない(?)男の子からのプレゼントに動揺しているようだ。
「……開けていい?」
明香はプレゼントの袋を片手で指差しながら笑顔で言った。
「うっ、……うん。どうぞ。」
俺はまだその緊張から離れられないでいる。
明香は袋を綺麗に開けてプレゼントを取り出すと、とたんにそれまでの優しい口調が一変した。
「……なにこれ?」
彼女は片手でそれをつまみながら言った。
「ドライフラワー……だけど……。」
花柄のかわいらしい(ちょっと子供っぽい)カップの中にドライフラワー。俺はいつか、どこかで聞いた、女性は花に弱いという証言にのせられ、急いで花屋で調達して来たのだ! とてもプレゼントには自信があったのだが……。
「プッッッ! 大志ったら、今の女子がこんなもの欲しがるとでも思った? かわいいねえ、大志ったら。」
明香は大きな声でゲラゲラ笑っている。
「なっなんだよ! いっ要らねえなら別にいいんだぞぉ!」
ちょっと惨めな気持ちになった。まるで女心を掴めない「子供」として扱われたようだ。
「ハハハハハハッ! いや、ただ大志があんまりかわいいプレゼントを渡してくるから、つい面白くなっちゃって!」
それは嬉しさとおかしさで妙なものを帯びた口調のようだった。
「いっ、一所懸命に考えたんだぞ! 文句あんのか!」
俺も少し自分がおかしく感じて変に吹き出してしまった。もうどうにでもなれ。そんな感じだった。
「いーやー! ありがとね。これ、大事にするよ。」
彼女はそれを袋に入れて大事そうに両手で持って、元来た道に帰っていった。
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――――あれからちょうど3年。
俺たちは互いに違う県の大学に進学し、今では連絡をとっていない。今彼女は何をしているか。大学の友達と楽しくパーティーでもしているのか、そればかりに頭がいってしまう……。
嗚呼、懐かしい。