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戦慄のクオリア  作者: 音無砂月
偽りの平和
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第一章 兵士(ソルダ)Ⅲ

 深く息を吸い、吐き出すと同時に「ラポール」と唱えた。

 全身に痛みが走る。藍華は痛みから逃れようとラポームを拒絶した。其の瞬間痛みが強まった。

 拒絶をすればする程痛みが増強するのが分かる。

 昨日、仁美は何と言っていた。遺伝子にサウロンのコアを移植した、と。そしてラポームはコアから生成された武器。つまり自分の分身のようなものだ。

 藍華は息を吸い込み、体内の何処かで生殖しているコアを認識することに専念した。

 藍華の意識はまず体内を循環する血液を通り、赤血球など血管の中に存在する物質を認識する。其処から更に奥へ進んでいくと心臓が見えた。

 ドクドクとリズム正しく動く心臓は見ていてちょっと気持ちが悪かった。

 心臓を通り過ぎ更に意識を深く沈めると暗い闇の中で無遠慮に輝く白い光のようなものが見えた。其れがコアだと認識した途端、意識がコアに吸い込まれた。

 背筋がゾクリとした。何か、自分じゃない何か、悪魔の顔をしたもう一人の自分が笑いかけたような気がしたからだ。

 深淵を覗く時、深淵もまた此方を見ているとはよく言ったものだ。

 意識をコアにもっていかれないように踏み止まり、次にラポームを認識する。そして、其の二つが融合するイメージをする。

 すると、ピアスが勝手に耳から離れ、眩い光を発し杖に形状を変化させた。

 「成功だな」

 「はい」

 「使い方は分かるのか?」

 「何となくですが。自分の中にあるコアが教えてくれる、そんな感じがします」

 「そうか」

 ラポームが正常に発動できることを確認した後は杖を棍棒のように使って戦う方法を伯明から学んだ。

 ラポームは硝子と同じ性質のようだが、硝子よりも頑丈で力一杯壁に叩きつけようとも、拳銃で撃たれようとも割れることはなかった。

 「お前さんはなかなか筋がいいな」

 今日は学校だった。授業なんて面倒だし、退屈だし、でもただ机について人の話を聴いていればいいというのは自分が思っているよりも楽だったと今になって藍華は思っていた。

 戦闘訓練は肉体的にもきついが、相手の出方を見て自分が有利になる出方を考え繰り出すのは精神的にもきつかった。

 「そろそろ休憩するか?」

 「いいえ、まだできます。」

 「根性あるな。でも、昨日の今日だからあまり無理をするなよ」

 「はい」

 訓練は一週間続いた。早急に使い物になるようになり、戦う必要があるのだろう。戦闘時間は三五時間。其れを一週間もすればさすがに肉体的にきついが、ラポームを発動すると思いのほか動ける。

 コアが動けない体を無理に動けるようにしてくれているのが分かった。

 訓練中に其れがよく分かった。肉体をこんなにも酷使していれば人よりも早く限界が来るのは仕方がないことだった。


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