オラクルベリルとの関係
密偵が得意な種族から、多くの情報を得られるようになった。隣国の情勢も確認できる。隣国は、オラクルベリル。多く有名な飲食店が立ち並ぶ。もともと国の近郊に広大な農園を所有している。国土自体も大きく、四季がしっかりしている事から、多種多様な植物が実り、多種多様な生き物が生息する。また、酪農に力を注いでおり、全体の食料自給率は高い。
しかし、軍事力については、あまり充実している訳では無かった。国境付近は、山や川に囲まれており、敵国からの侵略はあまりない。それに、呪われた島「リムズダール」を支配する魔王も、穏健派であり、また海に阻まれており、ここ数十年は戦争になっていないからだ。お陰で、隠密の錬度も低く、密貿易がしやすい。
ちなみに、密貿易の相手は、魔人である。オラクルベリルは、大戦時多くの魔族が上陸した土地でもある。そして、真っ先に支配下に置かれた。敗戦時に、退却が遅れた者たちが、マフィアの様に闇の社会で根をはり、表舞台から影をひそめた結果である。
話を戻す。城下町の人口は多く、マナが滞留しやすい。大きな町の近郊には、定期的に大型の魔獣が出現する。マナが滞留しやすい時期というのがあり、おもに夏季、冬季の二シーズン。現在は夏。オラクルベリルでは、自国だけで対処できず近隣各国に応援を要求している。ただ、先ほど説明したように、地形上、城下町まで応援を向かわせるには、時間とお金がかかる。そこで、近年は傭兵を雇っているようだが、素行不良でたびたび現地の人と衝突しているようだ。そのため、海運ができる「リムズダール」「ラフゴット」との関係は良好にしたいと考えているようだ。
「ラフゴット」は元々は、海賊が作った小さな町。戦力は期待できない。それに比べれば、「リムズダール」は一目置かれている。しかし、大戦の原因を作った島であり、今までは、国交も断絶していた。新政権がリムズダールで発足したことにより、国交は回復した。
しかし、オラクルベリルの国民には、根強い嫌悪感はある。オラクルベリルにとっては、一度支配されたという屈辱があるからだ。年配の世代では、反対意見は多いが今となっては、当事者がだいぶ亡くなった事により、戦争当時の記憶がある世代が少なくなった。忘却は決して悪ではない。新しい関係の始まりには、先入観は時として、歩みの枷になる。
そこで、正式な交易ルートを確保するには、恩を売らなければならない。歓迎会で折角渡る事になったので、その前に「リムズダール城主アークマリア」の名前で書状を送り、魔獣討伐に協力する旨を伝える。相手側の国民感情を考慮して、十名程度しか送らない事も記載しておいた。実際は、それ以上の戦力が、こちらにも無いのだ。
二週間後、帆船により三日がかりで、オラクルベリルへ渡り、王に謁見した。その前に、新歓を行っているが、その話はまた別の機会に語ろう。
王からの返信は、心良く待っているとの内容であった。実際訪れてみると歓迎ムードがあり、食事会も開いてもらった。アークマリアはその美しさを賛美され、威厳ある王の様なふるまいを続けていた。彼女を知る人が見ると、町の宿屋に泊まりたそうな雰囲気を、滲み出していた。期間を区切、数名の討伐隊を滞在させる許可を受けた。その間の宿泊、及び食費の提供、倒した後の魔獣の魔石等については、討伐の証として、一端提出し、それに伴う報酬を要求。その報酬については、他の派遣国より半額程割安にし、正式な交易ルートの確保を約束。関税については、互いに年一回協議を行う事にした。そして、最後にダメもとでお願いしたことがある。
それは、ラフゴット島との交易制限の依頼だ。兼ねてより関税が高く、習慣を理由に引き下げをしてくれないラフゴットに対して、圧力をかける狙いだ。実際、オラクルベリルに対しても、決して安いとは言えない関税をかけている。そのため、彼らの外貨の約九割を二国からの関税によるものだ。その二国が手を組めば、交渉が有利になるだろう。
実際、オラクルベリルも気にしていた部分だったらしく、快諾。これで取引は終わりだ。さあ、思う存分暴れよう。まずは、ポルセの家族を一ヶ月オラクルベリルに滞在させて、魔獣の討伐にあてる。武人の家系であり、非常に忠誠心が厚い。初期派遣では一番信頼できる存在だ。