バーグ商会
――リムズダール城下町
魔人と呼ばれる人たちは、常に差別をうけていた。そして、その人たちがたどり着いた最後の楽園が、ここリムズダールであった。自給自足で経済を発展させていった。しかし、自給自足だけでは、経済は頭打ちになってしまう。そこで、先々代の魔王が、大陸に領土を拡大しようと侵攻した。リムズダールは島国であり、魔獣の闊歩する危険地帯。守りは硬く、攻めに集中できた。それで、多くの国からたくさんの物品を略奪していった。各国が共闘して、先代の魔王の時、光の勇者なるものが現れて、戦線は後退し、果ては魔王城まで攻め込まれ、貴重な物品を全て奪われた。
町にも大きな被害があり、多くの人や物、金を奪われた。その時に、多くの忌子が産まれ、現魔王やその配下の多くが、その時産まれた。親も分からず、おのれの力のみで、今の地位を確立させた。多くの民衆が、戦争を望まなかったのも、現政権になった理由でもある。
島全体で、大きな産業も無く、魔獣が闊歩している事から、大陸側の国も、利用価値無と判断したようで、植民地化する事はなかった。現在は、中継点として、小島のラフゴット島により、交易をおこなっている。人間と魔人の両方が住み着いており、商業組合がその島の利用権を持っている。関税はかなり高いらしい。経済圧迫の原因になってはいるおうだ。
魔獣が多いことから、魔石の産出はどこよりも多く、濃度の高い物だろう。魔石はこの世界の魔導機工を動かす源になる。需要は、年々増加しており、取引価格もかなり高くなっている。トロール種の多い居住区を訪れ、数人を産出メンバーに抜擢。巨大な荷車を用意させて、多くの魔石を掘り出し、試しに他国へ、例の島を通さずに販売してみた。
販売結果は、島での相場の約五倍。一度に数百万Gの売上がたった。かなりぼったくられていたのだ。島への交易ルートは今後使用せず、密貿易を行う事にした。
ばれるのも時間の問題だろうから、正式な交易ルートを、確保しなければならない。ちなみに、給与を各鉱夫に払ったところ大いに喜ばれた。
発掘された魔導石や、魔獣を討伐して得られた魔導石は、すべて俺の目を通すことにした。数百万Gの価値の魔導石を、ポルセの家に持っていく。そこで、バーク商会を開く。
ポルセはすごく迷惑そうな顔をしていたが、途中であきらめらしい。
ポルセの家宝の宝玉を貸し与えてくれた。
その宝玉は、一定以内の質量の物品を収納するのに使えるものらしい。少しマナを消費するが、これでお金も含めて収納が便利になる、それに、常に携帯する事が可能で防犯上も役に立つ。ポルセは、ドラゴンだけに、多くの宝を所有している。今度ほかのモノも借りてみよう。
「貴様、よもや、このまま転がり込むつもりではあるまいな?」
「そのつもりだ。よろしく」
「全く……」
そっぽを向いているが、少し尻尾が動いているのがわかる。それに、もし嫌なら、宝玉なんか貸してくれないだろう。言葉使いは高圧的だが、基本的にはいい娘なんだ。最近は日課の読書を、二人でラウンジのソファーで行っている。読書といっても違う本を読んでおり、ポルセの入れたお茶を飲みながら、二人並んで読んでいる。三十分くらいで、どちらからでもなく、終わりにすると、もう一方もやめる。結構幸せな時間だ。
バーグ商会は、渡航する際に、町の人からほしい商品を前もって募っておき、それを販売する会社だ。利益は大体一割から二割くらいのせている。始めの数回は、原価に対して八割くらい乗せてしまっていたが、途中から、「還元率増」「原価取引」という能力を身につけた事により、相場での購入権から、原価への購入権にかわり、マナを使用する事により、マナへの還元率が上がり、実質的に割引された値段で、購入できるようになった。その事により、原価に五割くらい利益を乗せるだけで十分になった。
この割引効果は、実は物凄く絶大な効果を発揮している。なぜなら、公共事業にも役立てられるからだ。最近では、道の整地の為、大型な魔導機工を購入したのだが、原価で更に、マナによって割引できる事から、売値が一千万G(リムズダールにまで運んできた場合)の商品が、原価五百万Gでの購入ができたからだ。問屋や運送で相当とられている事が分かった。道の整地は進み。港と城下町が安全かつ、通り易くなった。今後は、近くにラボを作る為、この魔導機工はまだまだ、利用価値がある。