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牢屋にて

-―商業エリア


 まだ日は高いが、そろそろ寝る場所を確保しなければならない。商業組合を訪れ、日雇の仕事がないか確認する。そしたら、隣の町に行かないといけないが、荷運びの仕事があった。力仕事は得意ではないが、賃金を確保するためには仕方がない。

登録書にサインをして、別の町で発行した組合員カードを提出する。ブラックリストと照合して、一覧に無い事を確認された後、直ぐに依頼人が居る商業地区の商会へ行くことになった。


 依頼人は、かなり巨大な図体の、ロールという商人であり、荷物は果物等の食品の様だ。木箱に丁寧に詰められており、数箱を荷馬車に乗せて出発する。

御者はいないので、俺がその役目を引き受けた。一応、世間からは隠されていたとはいえ貴族だ。騎乗は嗜む程度には可能である。一緒に乗っている荷運び要員は、若い男と中年の男の二名だった。中年の男は従業員の様で、俺たちの監視も兼ねているらしい。

しかし、荷台でタバコを吸っていたりと、あまり真面目に監視はしていない。


 しばらくすると、大きな平原へでた。道は、平坦で特にロスは無く進む事ができる。隣町までも、あと少しであり、小さく町は見えている。どうも、支社が存在するらしくそこへ荷物を納めるのが、今日の仕事らしい。簡単な仕事なので、少ない賃金しか期待できない。しばらくして近づいた町に、馬を寄せようとした時、中年の男がここの町ではないといって、この道を真っ直ぐ進むように指示を出してきた。

 仕方がなく、言われた通りに町を通りすぎ、森を通る道へ進む。木々は青々と茂っており、その間から光りま漏れる。まだ日が高いので、暗さはあまり感じられないが、日が傾いたらすぐ暗くなりそうだ。森の大きさと、帰る時間を考えると少し馬の足を速める。

 森はどんどん深くなり、少しづつ光を隠す。ある程度奥へいった所で、この依頼について疑問が生じ始める。本当に隣町はここを通るのか?そもそも、隣町なら先ほどの町なのではないか?


 そんな疑問がいよいよ濃くなり、一端馬の速さを抑える。後ろの荷台に向かって話しかける。


「旦那さん。ちょっと町が遠くありませんかね?」


しかし、返答はない。

おかしいな?怖いな怖いな。そう思いながら、荷台が見えるカーテンを開けると、そこには中年の男も、若い男もいなかった。ふっと白い影が消えたようにもみえた。おかしいと思い、歩みを止めて、一端荷台が全て見える位置に回り込む。外から見ても荷台の中に人はいなかった。

 逃げた?でも逃げる意味は無いはずだ。そこで、荷台の中に入った瞬間。後ろから人の気配を感じた。しかし、急な眠気に襲わて、意識を手放してしまった。


――牢屋の中


 意識を取り戻した時には、牢屋の中にいた。暗くて、湿気が抜けていない。少しべたべたした感じ。長期間ここにいたら、精神がまいってしまいそうだった。取りあえず落ち着いて現状を把握しようと、周りを見回した。先ほどの、若い男は居なかった。それに、牢屋といっても隣に、もう一つあるだけの小さなものだった。声を掛けたが隣には、だれもいないようだった。困ったな、状況把握もままならない。

 そして、しばらくすると、人の足音の様なものが聞こえた。その方向を見てみると、鎧を着た女性が入ってきた。看守に女性を使うのは珍しい事だろう。そんなことを考えていると、そこには頬に鱗の付いた娘が立っていた。見た目の年齢は、俺と同じ十八歳くらいに見える。太ももの中間くらいまでのブーツ型レッグプロテクター、黒のタイツに、藍色のスカート、胸部の膨らんだライトメイル、肌が露出している部分があり首筋にかけて鱗が見える、金属製のショルダープロテクター。黒地に金と赤で刺繍が施されたマント。銀色のロングヘアに、金色に輝く目、その目は蛇のそれを思わせる。肌は褐色。腰には、剣を帯刀している。


「目が覚めたか?」


少し低めだが良く通る声だ。


「ここは?」


「リムズダール、貴様らが呪われた島と呼ぶ場所だ」


「俺は、何故ここにいるんだ?」


 女は、少し気まずそうな表情を見せる。


「我が同僚が、その…勘違いして連れ去ってきてしまったのだ。すまない」


「素直なのは良いが、何故、俺は牢屋になど入っているのだ?」


 前世での不快な気持ちが甦る。理不尽な投獄にはさすがに怒りを覚える。


「我が主の命令だ。許せ」


 立場を考えたら、ここで引き下がるべきだろう。しかし、今生でも理不尽に耐え続ける理由は無い。


「間違えたのなら、俺は関係ないはずだ。依頼された仕事もある。さっさと返してくれないか?」


「うむ、一理あるが、その仕事については、我らがだした偽物だ」


「マジか……。しかし、商会の依頼未達成は、ペナルティが付くはず。それに、今夜はどこで寝ればいいんだ!」


 頭を抱えて嘆く俺を見て、真顔で女は答える。


「ここがあるではないか」


「ふざけるな!」


「ううむ。それでは、我が館へ招待する。しかし、それには許可が必要だ。待っていろ」


 そう言って女は、出て行ってしまった。女の言っていた『リムズダール』は、俺がもともといた大陸から離れた島にある。マナが滞留しており、多くの魔獣が暮らしている。その土地を治めるのが、魔人である。魔人は、魔獣と人の間の存在。例えば、先ほどの娘は、ドラゴンと人間の間の存在。その頂点に位置する者が、大陸の支配者たちからは、魔王と呼ばれている。


 現魔王は、たしか一角獣(ユニコーン)だった様な気がした。魔王にしては珍しく、好戦的では無く、自らも含めて、女性を幹部にしていると聞く。野心が薄いとの噂から、討伐部隊の派遣は、ここ数年行われていない。


 しかし、何故そのような国が人さらいなどやっているのか。甚だ疑問である。考えても分からない事であり、考えるのをやめた。人が居なくなると、牢屋も静かなもので、湿度の高い部屋特有のぼおっとした感じと、滴る水の音が時折響く。特に、ベット等は無くそのまま、石畳の床に寝る形式のようだ。


 それから十分ほど経過しただろうか。再び、石畳の床を歩くコツコツとした音が聞こえてきた。再びドラゴン娘が現れた。


「許可が下りた。ついて来い」


「了解した」

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