数の暴力
無防備になってしまった俺は、多くの兵に囲まれる。
「道化師の類か?お前に勝ち目はない!仮面を外せ!」
仕方がない。仮面に手をやり、その瞬間に《透明符》を自分にはる。
「お前!どこだ?」
消えた瞬間から、また狼がわんさか湧いてきた。
「敵襲!ま、また湧いてきました。どういうことだ!」
仮面を外すように言った兵士を、真っ先に蹴り上げる。スライムはもういないが、後は狼だけで大丈夫だろう。右足にマナを流す。
「うおおおおおっ!」
右足を蹴り上げる。すると強烈な竜巻が上がり、多くを巻き込む。そして、狼たちの波が駐屯地を覆い、ついに一人もいなくなった。戦利品をほとんど売りつけて、今日の糧とする。1200万Gも稼ぎだした。しかし、第2軍の狼もいなくなってしまった。
「全く、この程度の軍隊でも、苦戦するんだな」
しかし、一人で制圧できたことは、称賛に値する。更に、工夫すれば、この能力は新たな段階へ進む事ができるだろう。ゼロス、ふざけた事を平気でやっているが、彼の作ったモノは、平気で人智を凌駕する。恐ろしい魔王だ。
あの戦いの後に、[魔核]について、いろいろ研究をしてみたところ。魔獣は合成が可能のようだ。例えば、[スライムの魔核][狼の魔核]を合成させると、粘液がついた狼が錬成できる。スライム特有の物理攻撃に対する耐性が高いうえ、スライムではできなかった俊敏性が増す。当然[魔核仁]の装着も可能であり、様々な特殊効果を添付する事ができる。
[ドラゴンの魔核][トロールの魔核]により、2本脚の巨大な龍の鱗が付いたトロールを2体作成してみた。「ドラール」と名付けたそいつらは、1体5百万G。巨大なメイスを購入して、装備させる。「大破壊棍棒」一撃で建物を粉砕するほどの攻撃力を誇る。ドラゴンの防御力と、トロールの攻撃力。ちなみに[強化+50]を付けているので、そうそうやられはしないだろう。更に、200万を使用して、200匹の狼を作成した。
――アスカンテ北西砦
「野営していたボンボンどもの部隊がやられたらしいぞ」
「ざまあないな」
「しかも面白い事に、全員命に別状はないんだってさ」
「マジかよ」
「仮面をかぶった変な人間が、魔獣を操ってたらしいぞ」
「なんだそりゃ」
「まあ、俺たちには関係ない事だけどな」
「ははは、俺も仮面のヒーローを見てみたかったぜ」
そして、彼らの巡回もいよいよ終盤に差し掛かり、後10分ほどで交代する時間が訪れた。彼らは異様な臭いを感じる。まるで獣が大量にいるような強烈な匂い。
「噂の仮面様か?」
「ははは、まさか……」
「……」
見張りの一人は、仲間が光にまみれて、どこかへ消えていく様を目の当たりにする。彼は空中に浮かんでいた。それは、仮面をつけた男が、彼を蹴り飛ばしたからである。蹴り上げた姿の仮面の男を、目に捉えながら、その見張りも次の衝撃で、自宅のベットに転移してしまうのであった。
そして、一夜にして、北西砦は、仮面の男と、彼が操る200匹もの狼により、占領されてしまうのであった。