武人の家系
帰国後、さっそくマリアの出頭命令と共に、ポルセの家族が集合する。ポルセの父親・グランデウス、母親・ミラレイア、兄・ディスフィガル、妹・シャンティの四名とその家臣五名。外見は、母親と妹がポルセと瓜二つであるが、親父はすごくがたいが良い、筋肉隆々で短髪、髭を生やしている。対照的に、兄は体が普通ではあるが、訓練された者の動きと、体型だ。
魔王と四魔将が、それをむかえる。
「御久しゅうございます。マリア殿」
「よく来てくれたグランデウス。この度は、オラクルベリルとの関係向上のためにその命私に預けてほしい」
僕は、少し苦手なんだよな。むさ苦しい所があってさ。
「了解いたしました。このたびは、娘シャンティの初陣となります」
シャンティたんか、くんかくんか。まだ、乙女の匂いがするぞ。チェック、チェック。
「マリア様、このたびは、天に届くほどの功をたてたいと考えております」
「うむ、良い心がけだ。子細は、ポルセより説明させる。存分に力を振るえ」
「「「はっ!」」」
「今宵は、我が城で休んでいけ」
まあ、少しの一日の辛抱だ。グダグダできないのは残念だけど、しょうがないね。
「ところで以前に比べ、だいぶ町が発展しているようですが?」
「新たな仲間が加わり、その者は財務の面で私をサポートしてくれている」
「さようでございますか」
「金の亡者などに心を許さないでください!」
兄のディスフィガルが吠える。
いるよね~こういう奴。すぐ大きな声出す奴。
「兄様っ!」
「安ずるな」
「こ、これは、差し出がましい事を申し上げました」
ディスフィガルは、深々と頭を下げた。
「よい」
ふぃぃぃ。なんとか収まったよ。ちょい苦手っスわ~。
――同日夜広間
簡単な宴が催される。たくさんの種類の食事がよういされる。オラクルベリルからの輸入品であり、どれもこれも美味である。ポルセが思い出話に華を咲かせていた。兄と妹と久しぶりに会ったので、嬉しいようだ。
「ところで、マリア殿。新たな仲間というのはどこにいるのですかな?」
「ああ、今はラフゴット島へ行かせて、交易の交渉をさせている。しかし、明日には帰ってくるはずだ。入れ違いになるはずだ」
「そういえば、マリア様そのものは、男と聞きましたが、何故人間風情の男などを登用したのですか?」
「まあ、成り行きだ。何か問題があるか?」
「問題大ありです。お姉さまが、もしその男の毒牙にでもかかった日には、私は万の兵を引き連れてまいります」
「おいおい、シャンティ」
「なあに、問題など無いぞ、一緒に暮らしているが、襲ったりはしてこないぞ。む、胸をもまれた事はあるが……」
場の空気が、氷付いた。魔王が冷や汗をたらたらと流し、気まずさで上唇を咬んでへの字に口をむすぶ。ポルセたん。誤爆だね。そして、当の本人は、その空気が凍り付いたこと自体も自覚していないようだ。
「妹よ。それはどういう事だ」
「言葉通りだ。私とバーグは一つ屋根の下にいる」
魔王様の肌から更に、汗がにじみ出る。ポルセたん、空気の読めないところは君の魅力の一つだけど、さすがにこの状況では考えてね。そして、バーグ君、君は帰りを遅らせた方がいい。早速伝書フクロウでも送ろうかな?
「お姉さま、私は寛容です。その男とお暮しになるのは認めましょう。しかし、その男の生殖器をのぞくのを条件とします」
バーグ君、君の稲荷寿司は、ヒミコに狙われるより先に、シャンティたんに召上られそうだよ。まあ、僕はユニコーンで、処女厨だからいいんだけどね。
「ご挨拶をしなければならぬな」
グランデウス、君のご挨拶は、『殺す』と書いてご挨拶ではないだろうね。グランデウスは先代からの付き合いだから、戦闘経験豊富で、殿として撤退しているなかでも、攻撃に転じ相手を撃退したことがある、魔族の英雄。そんな相手に君は勝てるのかなバーグ君。
「あらあら、パパったら」
バーグ君、ミラレイアさんを敵に回さなくてよかったじゃないか。分かるよね、家臣の母親を『さん』づけしている理由が、分かってよね。マジ、昔この人怖かったんだから、魔王って言われてるけど、頭上がんないからね。そこんとこ、四露死苦。
その後は、兄と妹が、何やら呪詛の様なモノをブツブツ呟いていた。気まずさに、マリアは口がΔ(デルタ)型になって、一定のリズムで食事をしていた。まるで感情のない機械の様だ。マリアズΔ。でっ、デカルチャー!
こんなに早く終わってほしい食事会は、子供の頃、父親に連れられて参加したパーティー以来だった。
主人公のいない日常パートは、魔王様の心情表現多めの予定。