地形
「あなたの討伐対象とやらは、その村にいるんですか?」
「厳密には村の中じゃないよ。村の近く、だと思う。情報が定かじゃなくってね」
「はぁ。私は村で布教さえできればどうでもかまいませんが」
「魔物討伐は手伝ってくれる?」
「面倒ですけど、それで村の英雄になれれば宣教効果も上がりますからね。あとはあなたの態度次第です」
「魔導連盟から謝礼金は出る」
「金額は?」
「とことん俗物だな君は。二十万クロナ」
「ほう。それだけあればお金がなくて日々の生活にも困窮しているたくさんの私を助けることができます」
「君が助かるのかよ」
「して、倒すべき相手はどんな化け物なんですか? 村にはどんな被害が?」
「そのへんもよくわかってない。まぁこういう土地の魔物だから、どんなのが出てくるかはだいたい予想がつくけど」
「無機物系ですか。どこまで行っても岩岩岩岩岩ですもんね」
「でも物の本によると、昔はこのあたりも貿易で栄えてたらしいよ」
「それがどうしてこんな岩だらけになってしまったんです?」
「あそこに見える火山の活動が活発化してね。一度大噴火して、このあたり一面を溶岩が覆っちゃったんだってさ」
「ほぉ。じゃあ岩をどければ下からいろいろ出てくるわけですか」
「いや、たぶんみんな溶岩の熱で燃えつきちゃってるよ。下は空洞になってるとこもあるって話だけど。場所によっては抜ける可能性もあるから気をつけて」
「鉄器とか武器は溶けずに残ってるんじゃないでしょうか。お宝が見つかるかもしれません」
「いや、そんなのあっても使い物にならないって」
「あのあたりとか、風化してていかにも踏み抜けそうです。ちょっと踏んでみてください」
「自分で踏め」
「怪我したらどうするんですか!」
「僕が怪我するのはいいのか!」
「もう、後から来る旅人が気づかず踏み抜く可能性もあるでしょう? 今のうちに気づいている人が踏み抜いて、事故を未然に防ぐべきです」
「そういう善行は僕みたいな魔法使いじゃなくて心優しい僧侶様がすべきじゃないかな?」
「今こそ卑しい魔法使いが汚名を返上するとき」
「誰が卑しい魔法使いだ! 卑しい僧侶に言われたくないわ! ていうかジリジリ押すな!」
「わかりました」
「わかってないだろ! しかも力強いしなんだこいつ本当に僧侶か!? あああっ!?」
「抜けましたね」
「足がぁぁぁっ!」