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試練

「歩いても歩いても面白みのない景色が延々と続きますねぇ」


「我慢しなよ。おかげで面倒くさい猛獣の類がほとんど出てこないんだからさ」


「それはありがたいですけど、暇も過ぎれば毒と言いますか、毒もなければ暇と言いますか。次の町まであとどのくらいです?」


「進んでる方角が正しかったら、このままのペースであと二日くらいかな。町って言うほど大きなとこじゃないよ。人が栄えられる土地柄じゃないからね」


「これなら僧院時代の院長の頭だってもう少し栄えてました」


「不毛の地呼ばわりするな。まぁ、だから次の町にはあんまり期待しないほうがいい。町というより村だから」


「綺麗な水で沐浴できて、やーらかい布団で眠れるなら小さい村で構いません。あと保存食以外のものが食べたいです。それから」


「期待に胸膨らませ過ぎ! 村が重圧に押しつぶされるよ!」


「えぇ? いま結構控えめだったつもりなんですけど、これがダメとなるとお酒も飲めない……?」


「僧侶のくせに贅沢だな!」


「僧侶だって人間ですよ。ご飯を食べなきゃ生きていけませんし、満足に睡眠できなければフラフラになりますし、甘いものを食べないとイライラしますし、お酒を飲まなきゃやってられないときもありますし、定期的に魔物や猛獣をぶちのめしてストレス発散しないと」


「後半は僧侶じゃなくて君の性質だろ。最後に至っては猛獣の性質だろ」


「あなたはよく平気でいられますね。ひょっとして魔法使ってます?」


「そんな便利な魔法はない」


「ないんですか。背中に大量の縮れ毛を生やすことで岩場に寝転がってもふかふかに感じられる魔法とか」


「恐い」


「さすがにそこまで突飛なものでなくていいので、単純に水魔法で水浴び、とか」


「辺りに水が見当たらないからなぁ。いくら魔法でもその場にないものは出せない」


「……案外不便ですよね、魔法って。教会じゃ禁忌だとか言われてるくせに、物理法則にも逆らえてません」


「そんなことできたらこの世界はとっくに魔法使いが支配してるよ。君のほうこそ、なにか便利な僧侶の知恵とか道具とかないの?」


「こうした不便も神様の与えたもうた試練だと思えば、ちっとも苦ではありません」


「精神論かよ。しかも苦にしてるじゃん。さっきから文句タラタラじゃん」


「神様には文句など露ほどもありませんが、あなたには不平不満を滝ほど垂れても大丈夫。それがあなたの試練になるので」


「都合いい教えだな!」


「ですからあなたも私に試練を与えていいんですよ。そしたら私はあなたにさらなる試練を」


「争いの種かよ!」




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