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【荒野】

 見渡す限り一面の赤黒い土と岩、緑のない景色に空だけが青く抜ける。樫の木の表皮のように固く強張り割れた地面は火山性の岩石に覆われ、長い年月を経て風化した砂に養分はほとんどない。

 

 そこは生き物が棲むことを許さない土地だった。ところどころに生えている背の低い茂みは、雨期の面影もなくカラカラに乾き、まるでひっくり返って死んだ小動物の骨のように固まっていた。ごくまれに吹く風に乗って、どこかからやってきた種が運良く根づいたとしても、荒原の過酷な環境の前にはなすすべなく朽ち果ててしまう。そうして荒野は、植物と言わず動物と言わず、ありとあらゆる来訪者を拒んできた。


 しかしこの世界にはそんな不毛の地でも唯一拒むことができない生物が存在した。他種族からはイコノミカとも呼ばれている彼らは、特定の環境に甘んじることなく、その知謀と無謀と欲望をもって長く過酷な道のりを踏破し、活動範囲を広げることを覚えた唯一の生物種だった。彼らが歩いた場所は草が踏みしだかれ、土が踏みならされ、砂がかき分けられ、岩がすり減り、いつの間にか道ができる。荒野であっても、否、猛獣の少ない荒野であるからこそ、それは例外ではなかった。


 そして今日もその道の上を二つの影が行く。

 一人は灰色のローブを纏い、手に杖を携えた魔法使い然とした男。もう一人は白いチュニックに身を包み、口元を隠すように紫のストールを巻いた僧侶風の女である。

 二人は互いにとりとめない言葉を交わしながら、石巌の道をゆっくりと進んでいく。厳かな大自然のなかにあって、そこだけが不釣り合いに賑やかだった。




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