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S R.I.P.  作者: 棚河 憩
二章
17/37

~パーティー結成~


――――――――――――



 次の日の朝。花雪堂の前。



「本当にお世話になりました」


「いやいや、こちらこそ。リンツ殿にもらった薬でワシの関節痛もだいぶよくなりました」


「それはよかった。これからもお元気で」


「リンツ殿も体に気をつけて下され。後ろの方々も道中気をつけて」


「ドウゲン殿が手を差し伸べてくれたお陰で自分達は救われた。この恩は忘れませぬ」


「助かったよ、じいさん。元気でな!」


「……」



 エイアードはペコリと頭を下げるだけ。



「……で、リッカロッカ。その荷物は?」


「はい! 着替えと、歯ブラシと、食料です! ソルテ焼きもありますよ?」


「いや、中身を聞いてるんじゃなくてだな……」


「リンツ殿。この子も連れて行ってやってくれませぬか?」


「はい?」



 突然のドウゲンの頼みに目を丸くするリンツ。



「ワシの体の調子もだいぶいい。弟子もできた。そろそろこの子の望みを叶えてやりたいのです」


「それって、リッカロッカの父上のことですか……?」


「ええ、このまま文を待っても仕方がない。探しに行けと昨日ワシが持ちかけました」


「……」


「もし、最悪の形で結果を知ることになろうとも、リッカに納得させてやりたいのです」



 リッカロッカを見つめるリンツ。彼女の目に迷いはなかった。



「いーんじゃねぇの? 女の子いた方が旅も楽しいぜ?」


「お前な……」



 横から口を挟んできたヘイゼルに呆れるリンツ。



「ドウゲン殿の孫娘だ。付いてくるというのなら俺は全力で守ろう」


「バルナス、アンタまで……」



 バルナスは止めてくれるかと思っていたリンツはエイアードに視線を向ける。



「……バルナスが守ると言うのなら、私も力を尽くすだけだ」


「……はぁ……危険な旅になるかもしれないぞ?」


「覚悟の上です」


「父親が見つかる保障はない。大体、俺の旅の目的はリッカロッカの父親を探すことじゃない。後回しになってもいいのか?」


「構いません。それにもし死んでいたとしても、お花を手向けてあげたいんです」


「後になって帰りたいはナシだぜ?」


「女に二言はありません。付いていくと言ったら付いていきます」


「……はっ、上等だ……わかった。一緒に行こう、リッカ」



 リッカロッカに手を差し出すリンツ 「はい!」 と元気よく手を握り返そうとしたところで



「よろしくな! リッカちゃん! 俺のことは気軽にヘイゼルって呼んでくれていいぜ!」



 またも横から入ってきたヘイゼルに握手を奪われた。宙に浮かんだままの手をゆっくりと下ろすリンツ。なぜか彼の顔は寂しそうだ。



「皆さん、孫のこと、よろしく頼みます」



 深々と頭を下げるドウゲン。



「じゃあ、おじいちゃん、行ってくるね」


「おお、行って来なさい。たまには文でも送っておくれ」


「うん。私が戻ってくるまで元気でいてね」


「もちろんじゃ。まだまだ死にはせんよ。弟子に伝えなければいけないことも山ほどあるでの」



 ドウゲンの後ろでそれぞれの別れの挨拶をじっと見守っていた元盗賊の男



「この村のこと、頼んだぞ」


「バルナスさん……はい! 俺、頑張ります!」



――こうして、バルナス、ヘイゼル、エイアード、そしてリッカロッカを加えたリンツ達五人は村を後にする。村を去る際に何人かの住民はバルナス達に謝罪していた。



――――――――――――



 ソルテを発って一時間程。五人は馬車に揺られていた。ソルテの住民が村を救ってくれたお礼にとリンツに貸してくれたのだ。御者台にはエイアードが座っている。ソルテのような小さな村に上等な馬車があるはずもなく、幌の中で他の四人は窮屈そうに座っていた。



「……なぁ、なんでダンナが御者台じゃねぇの? 一番ガタイいいのに。すげぇ場所取ってる」


「文句をいうな。エイアードが一番監視向きなんだ。仕方がないだろう」


「密着すんならリッカちゃんの隣がいいんだけど」



 リンツとリッカ、ヘイゼルとバルナスで隣り合い、向かい合う形で座っている四人。ヘイゼルは出発してからずっとこんな感じだ。



「場所、変わりましょうか?」


「ホント? いや、悪いねー。ほらほらダンナ、避けろって」


「おい、それでなくても狭いんだ。ごちゃごちゃ動くなよ」


「なんだよ、リンツ。お前はいいよ。ずっとリッカちゃんの隣だもん。お前だってその場所譲りたくねぇだけだろ?」


「は? なんだそりゃ」


「ごまかすなってー」


「いい加減にしろ、ヘイゼル。そんなに窮屈なら幌の外で縄に括り付けて引き摺ってもいいんだぞ」



 バルナスに窘められようやく大人しくなったヘイゼル。

 


「……バルナス」



 後ろの騒がしさをよそに、御者台で周りに注意を払っていたエイアードが声をかける



「なんだ?」


「……前方およそ百メートル先、魔獣だ」


「数は?」


「四。ブーティーボアだ」


「わかった。撃てるか?」


「……問題ない」


「ヘイゼルも出す。二体ずつ頼む」


「……了解」


「なんで俺が?」


「窮屈なんだろう。行ってこい」


「やだよ。面倒くせぇ。そうだ。リンツ行けよ」


「……俺が出てもいいが、ここらでバシッと仕留めてリッカにアピールしておいた方がいいんじゃないか?」


「行ってくるぜ!」



 バルナスを無理やり押しのけ、幌から飛び出していったヘイゼル。既に二匹はエイアードが狙撃し仕留めていた。左肩はなんとか動くらしい。



「……自分が行きたくないからって私をダシに使いましたね?」



 ジト目でリンツを見るリッカ。



「元気が有り余ってる奴が行った方がいいと思っただけだよ」


「確かにな」


「もう、バルナスさんまで。ヘイゼルさん一人で大丈夫なんですか?」


「アイツはあれでも闘士クラスだ。四級魔獣程度なんのことはない」



 女好きで調子のいい男だが、実力は確かなようだ。事実、三人が幌で話している間にヘイゼルは残りの二匹を仕留めていた。一匹の足を持ち、褒めてくれと言わんばかりに馬車に手を振っている。馬車はヘイゼルを置いて通りすぎていった。



「おおぉぉぉおおおおい!!!!」




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