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S R.I.P.  作者: 棚河 憩
序章
1/37

~熱砂にて、一人~

初めまして。棚河 憩(たなか いこい)と申します。

稚拙な文章ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。

 

――どういうことだ。

気が付くと辺り一面砂漠だった。先ほどまで何をしていたか全く思い出せない。

格好はTシャツとボクサーパンツだけという軽装。とてもこれから砂漠を踏破しようという者の格好じゃない。


 履物すら履いていない。何故かいつもより近くに感じる太陽で熱せられた砂が熱く、とてもじゃないが五分とその場に立っていられない。


 先ほどまでの記憶がないことと、まるで生命の気配を感じず、無音にも思える砂漠に言い知れぬ恐怖を感じた。


「おーい! 誰かー!」


 精一杯声を張り上げてみても反応はない。むしろ吸い込んだ空気が熱く、喉が焼け付くように痛むだけだった。


 「クッソ、どういうことだ・・・・・・罰ゲームにしちゃやりすぎだろ。なぁ! ・・・・・・え?」


 こんなことをしそうな友達の名を呼ぼうとした時に気付く。先ほどまで何をしていたかだけでなく、友達の名前も思い出せない。自分の名前さえ。


「なんだよ・・・・・・なんなんだよっ!」


 必死に何か一つでも思い出そうとその場にしゃがみこみ、頭を抱えて考えるも何も出てこない。

一つだけわかったことは、このままここにいても死ぬだけだということ。紫黒の髪の先を汗が伝い、乾いた砂に落ちたところで俺はようやく歩き出した。既に足裏の感覚は無くなってきていた。



 ―――――――――― 



 一時間ほどは歩いただろうか。時計がない為時間がわからない。ましてやどこまで歩いても同じ景色。時間の感覚がある方がどうかしてる。加えてこの暑さ。いや暑いなんてもんじゃない。最早熱い。暑い場所に軽装でいることがこんなに辛いとは思わなかった。


 食料も水もない。体力の消耗を少しでも減らすため、誰かに気付いてもらおうと声を出しながら歩くことは歩き出して十分でやめた。


 歩きながら少しでも何か思い出そうと暑さでぼやけた頭をフル回転させたがやはり何も思い出せない。思い出せないものはしょうがない。思考を別の箇所に回すことにした。


 ここは砂漠。生き物の気配は今のところ感じられないとはいえ、サソリや毒蛇がいたっておかしくはない。何といっても俺の格好はTシャツとボクサーパンツ。刺されるか噛まれるかすれば一巻の終わりなのだ。足元を注意して歩くことにしたところでふと気付く。



 (俺の足、こんなに日焼けしてたか?)



 いくら軽装で砂漠を歩いているとはいえ、この一時間そこらでここまで日焼けするものだろうか。

いや、それより先にまずは皮膚が赤くなるだろう。


 自分の体すら見覚えがない。万が一誰かに助けられても自分の名を名乗ることすらできない。

最早パニックを通り越して笑えてすらくる。


 それでもなぜ未だに俺は歩き続けているのか。とうに体力は限界で汗もかかなくなっている。

熱中症だろう。無理はない。四十度を軽く超えているだろう場所で水分補給もせずに歩きっぱなし。気力と死にたくないという思いでここまで彷徨ったがもう限界だ。


 足を止め、その場に倒れこみ、思考を停止したところで地面に振動を感じた。



(地震か?)



 いや、地震とは違う。まるで何かが地面の下で蠢いているような気味の悪い振動。

霞む視界で俺が捉えたのは砂の下から飛び出してきた巨大なミミズだった。



「・・・・・・死神ってのはミミズの姿してんのか」



 くだらないジョークを呟き、俺は生きることを諦め目を閉じた


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