積極的に
15.
時刻を同じくして、ちかげという一人の少女は、通学途中の道で深く悩んでいた。
今まで幼馴染であったたけるが、今まで一番自分が近くにいると思ったたけるが、こうもあっさりと、ポッと出の新キャラに獲られてしまったことを。
「あー、もうなんなのかしら! ちとせって誰よ? いつからあんなに仲良くなったのよ!」
ちかげは、カバンを大きく振り回しながら、自分の気持ちを表現していた。
「なによ! ちょっとスタイルが良くて、髪の毛がキレイで、かわいいだけじゃない!」
彼女はさらに大きくカバンを振り回した。
一日にして、二人の進展した光景を見せられた彼女は、ちとせには適わないと思ってしまったのだ。
しかし、自信がないわけじゃない。でも自信があるわけでもない。無限ループしそうな悩みが、一段と彼女の頭を悩ませていた。
「あいつって、本当に私のこと、うざいとか思ってるのかな? 嫌われたりしてるのかな?」
彼女は少し涙ぐんでいた。ミシッミシッと踏みしめる落ち葉は、その心を深く深くへと誘い、普段考えないようなことまでも、表面化させてしまう。
「でもくよくよなんてしてられないわ。もうすぐバレンタインデー。絶対にあいつを喜ばせて、振り向かせてやるんだから!」
振り回していたカバンのつかみをギュッと握りしめ、何かを決意したかのような表情をしながら、彼女はまた、学校へと向かって、いつもより力強く、歩きだすのであった。
16.
午前中の授業をいつも通り淡々とこなし、お昼休みの時間になると、教室にいる生徒たちがグループを作ってお弁当を食べ始めたり、売店に行く者がちらほらいる。
そんな中、俺は、マサトと教室でいつもの昼食タイムに入るのだった。
マサトと俺の席は、偶然なのか必然なのか、いつも前後ろ、そして右左隣になったりと、必ずお隣さんになるのである。不思議な現象だ。学校の七不思議に認定とまではいかないが、俺たちの間で、ひそかに七不思議認定している。
何はともあれ、弁当を食べることにした・・・のだが、弁当を開けようとした瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。
「たけるー! たけるー! どこよー!」
と教室の前のドアから大声で俺を呼ぶ美少女が一人。
そう、ちかげだった。
俺に気付いたのか、ちかげは俺の席の近くまで、トコトコと歩いてきた。
「あ、いたいた。一緒にお昼食べようよ!」
と歯切れの良いキレイな声で、お食事の勧誘をされた。
あいつからお昼誘ってくるのは珍しいな。いつもなら、昼は友達と食べてるはずなんだけどな。
そんなことに疑問を抱きつつも、
「んー、まぁ別にいいよ」
と俺は特に断る理由もないので、了承することにした。
「あ、そうだ。マサトもいるんだけど、大丈夫か?」
そう言うと、ちかげは美少女であることを思い出すような魅力的な笑顔で・・・
「ちょっと、席外してくれるかな? マサトくん☆」
といつものテンションで、やんわりと拒絶しやがった。こいつ恐ろしいな・・・。
一方のマサトはというと、瞳に大量の涙を浮かべながら、食べかけの弁当を片手に教室へ出て行った。
「これだからリア充は! リア充は! ちきしょう!」
と猛スピードで足から煙が出てるかのごとく去っていた。行先が微妙に男子トイレの方向だったのは、俺の考えすぎなのであろうか。
まぁ何はともあれ、昼食はマサトではなく、ちかげと摂ることになった。
「マサト泣いてたぞ」
と俺が言うと、ちかげは、人差し指を立ててウインクをしながら、
「いいのいいの☆ 私はたけると食べられればそれでいいの☆」
「いあ、ダメだろ・・・」
ちかげの強引さに少々呆れつつも、この後しばらくは他愛のない会話を続けていた。
「にしても、今日ずっと嬉しそうな顔してるなお前。なんか良いことでもあったのか?」
と不思議なことに終始笑顔なちかげに対して、素朴な質問を投げた。
するとちかげは、笑顔のまま、
「うーん、そうだねぇ。しいて言うなら、たけると一緒にご飯食べられることが、嬉しいからかなっ☆」
とちかげは、箸を持ったまま、頬に手を当て、恥ずかしそうな素振りを見せた。お行儀わるい。
「まったく箸持ちながらなんて行儀悪いぞ、ちかげ」
「あらやだ、たけるさんウフフ・・・」
「あらやだ、じゃねーよ。ちょっと気持ち悪りぃよ」
「えー、そんなこと言わないでよぉ☆ たけるさんウフフ・・・」
とお嬢様(?)のような口調で話し続けるちかげは、いつもより段違いに気持ち悪かった。
「ちょ、段違いに気持ち悪いって何よ! 私だって頑張ってんだからね!」
何を頑張ってるんですか一体。あと今の聞こえてたのかよ。
「ふ、ふーんだ。たけるなんかもういいですよーだ!」
と頬をプクーッと膨らませながら、ちかげは怒ってスタスタと自分の席に戻ってしまった。
ったく笑ったり怒ったり、忙しいやつだな。
おっと、弁当まだ食べてる途中だった。
早く昼食済まして、昼休みをしっかり謳歌しないとな。
そう思っていると、俺のクラスに再びやっかいな訪問者が現れた。




