悩みのタネ
14.
朝の光が、始まりを告げ、自室の窓からの太陽光を浴びた俺は、昨日の気分に反して目覚めが良かった。
そして、まるで昨日の事など忘れたかのように、いつも通り飯を済まし、身支度を整えて、玄関へと向かう。
でもどうやら、心には嘘をつけないらしい。
やはり昨日の事が頭をずっとよぎり、そして悩ませる。
「千歳が俺を好きだ」ということ。
それは、マサトが勝手に言った妄言であること。
そもそも、確証が何一つ得られないこと。
そんなことを考えながら、俺は学校へと向かう道を一人歩いていた。
周りからは変な目で見られていないだろうか、ということさえ気にも留めなかった。
俺は頭を少し掻きむしり、今はこのことは忘れようと思った。
「おはよ~!」
後ろから、元気印の女の子の声が聞こえた。そしてポンポンと肩を叩かれたようだ。
まぁこんなことするのは、俺の知ってる世界では一人しかいない。まぁあいつだよな。
「ったく・・・朝から元気だなお前は。ちか・・・g?」
目が点になるという言葉を、心から信じたのは、正にこの時だった。
元気印の女の子はちかげではなく、明るみのかかったキレイな茶色髪で、サラサラとしていそうなロングトレートの女の子、そう、ちとせだった。
まったく、なんでこう追い打ちをかけるように事が進むのかねぇ。頭痛くなってきた。
「ん~?なんか元気ないね。どうかしたの?」
主にあなたが原因です。
・・・なんてことは言えず、ひとまず挨拶することにした。
「おはよう、ちとせ」
「うん、おはよう、たける!」
少し首を傾げながら挨拶するその様子はなんだかとても可愛らしくて、ちょっと照れくさくなった。
「ところでさぁ」
と、ちとせは先ほどの体勢のまま、質問を投げかけてきた。
「ちかげってだれ?」
なぜちかげの話が出るんだ?
あぁそっか、さっきちかげって言いかけたもんな。とりあえず説明しとくか。
「ん? ちかげは、俺の幼馴染だけど」
「そっかぁ幼馴染かぁ・・・」
ちとせは、少し悩ましい顔で、頬に人差し指をつけながらそう言った。
「ちかげさんって、どんな人?」
また質問ですか。まぁ別に答えない義理はないし、いずれちかげとは嫌でも面識を持つであろう。
そう思った俺はちかげの特徴やらを話すことにした。
「まぁそうだなぁ、ちかげはとにかく元気印って感じかな。まぁその元気がめんどくさい時もあるけど。俺はあいつに振り回されっぱなしだからな」
「へぇそうなんだ」
ちとせは興味ありそうに頷いた。
俺は同じペースでちかげの紹介を続けた。
「まぁそんな性格のあいつも、最近高校に入ってから、校内で結構人気あるらしいぜ。なんか噂だと先輩と後輩から告白受けたっていうし」
「へぇそうなんだ」
ちとせは表情を少し曇らせながら頷いた。
俺はさらに話を進めた。
「まぁ、あいつも昔より、美人ていうかまぁ見てくれは良くなってきたって思うから、世の男子は皆引っかかってしまうんだろうな」
「へぇそうなんだ・・・」
ちとせは、なぜかうつむき気味な顔で、
「仲、いいんだね・・・」
と言った。なんかまずいこと言ってたか? 俺?
そんな話をしていると、いつの間にか、学校へと到着していた。
そういえば、ちとせと、こうして話すのは初めてだな。
なんだかとても自然な感じで話せたし、とりあえずホッとしたかな。今朝は家出るまで意識しっぱなしだったし・・・。
なんだろうなぁ。ちとせと話しているとなんだか心地よい感じがする。
ちかげみたいなテンションなんだけど、なんか落着きがあるっていうか、そこら辺はお嬢様の性格でも出てるのか? ん? ・・・ってまた意識しとる! マサトのアホ! あーもう頭痛ぇ・・・。




