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現状確認3(件の女狐編)

そうして、己の現状を侍従長とともにしみじみと再確認していれば、後片付けを終えたマリヤと召使の面々が、満足げな表情で、戻ってきた。

「これで、これであの女狐にぎゃふんと言わせられますわ!」

「ええ、お姉様!あの恥知らずの女狐の悔しがる顔が目に浮かびます!」

「完璧ですわ!」

 おかしなテンションの自分の侍女と召使たちに引きつつ、アルフディアが説明を求めるように侍従長を見やれば、侍従長も困ったような表情で、彼女達を見やりながらため息交じりに。

「これ、仮にも王妃殿下にお仕えする者たちがなんという事を言っておる、相手がたとえ元は学友といえど今は妾妃さまであられるのだぞ。」

 と侍女たちをたしなめているのを聞き、ようやく件の“女狐”が妾妃である事を知り、なるほどとため息をつく。

 話の内容を聞くとどうやら彼女も自分の付き人候補だったらしいが何かの拍子に妾妃になり彼女たちはそれが気に入らないらしい。

 別に陛下が気に入られたのだからよいと思うが…。

 心の中だけで呟いたはずだが、顔に出ていたのか、マリヤがギラリと睨みつけてきたから、少し引きつつ。

「マリヤ…?顔が怖くなっているぞ…?」

 とそっと、微笑みながら言ってやれば、ハッとしすぐににこりと微笑み。

「失礼いたしました、あの女狐のことを考えますとどうも理性の緒が緩んでしまうようで、お見苦しいところをお見せいたしました。」

 微笑んでいようと、その背後に恐ろしい気配…というか完全に怒りで魔力が滲み出ている、さすがに侍女に選ばれるだけに、そこらの兵士より強い魔力を持っているなと、あさってな方向に感心しつつ。

「…その件の妾妃どのとは相当な因縁がありそうだな…。」

 と呟けば、少女たちの眉間に深すぎる溝が刻み込まれる。

「別に因縁なんてありませんわ。」

 冷淡な声で召使の一人がぼそりというと、ほかの少女たちも暗い目で怒りを吐き出すように次々とまくし立て始める。

「ただろくな学力も無いのに家柄と権力のごり押しで無理やり学院に入学してくる浅ましさに腹が立つんです。」

「その上学院に在学中もまったく授業に出てこない…。」

「そのうえで試験日だけ出てきて、試験を受けるんです、………学園に在学している使用人の子供が!!」

「そんなふざけたことをしているのに父親が伯爵位で大臣の職にあるので学園長まで何も言えずに結局彼女の受けた試験として採点されて!!」

「結局3年間代わりを務めさせられた子は一切試験を受けていないという形で放学になってしまって!」

「しかも親まで伯爵家を首になって!一家心中寸前のところを罪滅ぼしにと学園長がどこかのお屋敷で働けるよう取り計らったらしいですが…。」

「そんな恥知らずが最後に何をしたと思います!?付き人を決める最終試験の面接のとき堂々と陛下の妃となるためにここに来たとのたまったんですよ!?」

「私たちが必死で、妃様の為に学んでいるその横で!」

「何もしていなかったあの女が家柄だけで妾妃に収まったんです!」

「「「「「「これが許されると思いますか!?」」」」」」

「あんな恥知らずが妾妃と言えども妃を名乗るなど国の恥です!」

 ものすごい勢いでまくし立ててくる少女たちに、逃げ腰になりつつ、確かにそれは嫌われるだろう、という話の内容に侍従長を見やれば、神妙な顔で頷いている、どうやら本当らしい。

 半分以上親の策略だろうが、娘もそれに乗って妃になって当然と思っている辺りアルフディアとしてはあまり近づきたくない人種である事は間違いなさそうだ。

 そんなことを思っていれば、マリヤが爛々と目を光らせ。

「ですからアルフディア様!アルフディア様の魅力で陛下をメロメロにしてあの女狐をこの城から追い出しましょう!」

 と言われ思わずはあああ!?と声を上げれば、少女たちがこぞって。

「アルフディア様ほどお美しければ、陛下もきっとアルフディア様に夢中になられますわ。」

「そのたおやかな風情を目にして靡かない殿方はおりません!」

「先ほどの微笑み!あれを向けられて保護欲を掻き立てられない者など男ではありません!」

 とキラキラした目で、人のコンプレックスをげしげしと踏みつけてくる少女達に沈没していれば、いつの間にやら女狐を追い出す作戦会議なるものを始め、ていかにして自分に陛下を陥落させ女狐を追い出すかを嬉々として話合う少女たちを目に、アルフディアは深いため息をついた。

 何が悲しくて12の時に妻に捧げ、20年以上守り抜いてきた操を、いくら夫になるとはいえ男相手に散らす算段を娘と同年代の少女たちにされなくてはならないのか。

 考えれば考えるほど、悲しくなってくるアルフディアに、同情してくれる人間は残念ながらいなかった。

 彼の輿入れを喜ぶ者しかいない中で、彼の悲しみに気づいてくれる者が皆無なのは当然のことだろう。


 そうして、悲しみに暮れているアルフディアを無視し、マリヤは嬉しそうに。

「今日からは陛下や他の王妃様とご一緒に、大広間でのお食事となります、最初の印象が大切ですわ、アルフディア様!」

 頑張って陛下のご寵愛を勝ち取りましょう!

 と言われたが、残念ながらそれは無理だろう。

「張り切っているところ悪いが、私はあまりテーブルマナーが良くない、他の妃殿下方から笑われる可能性こそあれ、陛下のご寵愛を勝ち取れるほど優雅に食事などできないと思う。」

 何せ領地では農民たちと共に野良仕事に明け暮れ、食事も彼らと共に鷲掴みでしていることが多かった身だ、テーブルマナーの必要な食事など年に数回するかどうかの人間に優雅な食事姿を求めないでくれと言えば、全員が難しい顔で唸ったものの、ものの数分で立ち直り。

「「「「「ならば今のうちに練習いたしましょう!」」」」」

 と言うや否や、あっという間にテーブルに食器をセットされ、鬼気迫る表情の少女達に見張ら…もとい、見守られながらなんとか、マリヤからの可をもらう頃には浴室での苦行に引き続き、精神的に疲れ果てぐったりとしているアルフディアを横目に、少女たちは真剣に夕食用の衣装を検討し始め、何も言う気力もなく見守っていれば、花嫁衣装もかくやという衣装を用意されそうになり、慌てて。

「これから毎日のことだからシンプルなものにしてくれ!」

 と言ってやれば、全員がハッとした表情で、ようやく自分たちがあさってな方向に思考が飛んで行っていることに気づき、平謝りされつつなんとか今日の分の仕事も終わらせ、色々余計な飾りを着けたがる召使たちの手を逃れ、なんとかシンプルな姿にまとまった時には、すでに食事に向かう時間になっていた。


 これだけですでに疲れ切っているのに、もう一仕事あるのかとため息を付きつつ大広間に向かうのだった。

 

 次回ようやく陛下登場です。

 アルフディアの侍女や召使たちは、騎士たちや学院の同級生たちのせいで衆道になれているので、陛下と本気でくっつけようとしています。

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