とある叙事詩の断片~騎士と女王の物語~
懲りずにまたまた投下。
今回はちょっと詩から遠ざかってます。
彼は、英雄だ。
たった一人で、仲間のために囮になった。
敵将と戦う仲間を助けるために、命をかけた。
彼は、確かに英雄だった。
彼女は、英雄だ。
たった一人で、敵将を討ち取った。
囮となって戦う仲間を救うために、命をかけた。
彼女は、確かに英雄だった。
海の騎士。
鯱を乗りこなし、海豚と心を通わせ、海竜をも退ける。
空の姫騎士。
天馬を乗りこなし、鳥と心を通わせ、飛竜をも退ける。
二人は、違っていたけど、同じだった。
互いの想いを知らずに、互いを大事に想っていた。
けれど、互いの想いを知らなかったから、恐かった。
嫌われない?失望されない?怖がられない?
互いに不安に思った。
けれども、目の前には戦いがあった。
そして、悪夢の戦いは終わった。
空の姫騎士は故郷に戻り、女王になった。
けれど、海の騎士の故郷は、沈んでいた。
女王は言った、「海の騎士様、どうか私の夫になってください」、と。
海の騎士は言った、「私では、あなたの夫に相応しくない」、と。
彼等は互いに譲らない。だから、一つの賭けをした。
武闘大会で騎士が優勝すれば、女王と結ばれると。
この世で一番強ければ、女王にも釣り合うだろう、と。
そして、大会の日。
騎士は、正体を隠して戦うという。
だから、彼を贔屓する者はいなかった。
けれど、それが悲劇を生む。
決勝戦。
女王は、胸の高鳴りを抑えながら、戦いを見つめていた。
方や、白銀の全身鎧の騎士。
方や、黒装束の暗殺者。
どちらが騎士なのか、誰が見てもわかる。
誰もが、騎士の勝利を望んでいた。
誰もが、騎士の勝利を確信した。
けれど、暗殺者は何度も何度も立ち上がる。
腕が曲がっても、足が折れても、血反吐を吐いても立ち上がる。
その姿に、人々は恐れた。
まるで、魔物のようなその姿を恐れた。
兵隊が暗殺者を取り囲む。
魔物が優勝するなど、あってはならないのだから。
女王の婿選びに、魔物が選ばれるなどあってはならないのだから。
暗殺者は、捕らえられ、牢に繋がれた。
次の日、女王は白銀の騎士を呼んだ。
女王は問う「あなたは、なぜその鎧を脱がないのですか?」、と。
騎士は何も答えない。ただ、跪くばかり。
女王は訝しみ、騎士に近づく。
すると、騎士は女王に襲いかかった。
女王は咄嗟のことに動けない。
けれど、女王に刃が突き立つことはなかった。
なぜなら、暗殺者が己の身で刃を受け止めていたから。
暗殺者の右肩に突き立った刃。その色は、暗い闇の色。
女王は気づく、騎士は魔導鎧であることに。
そして、暗殺者こそが、彼女の愛した騎士なのだと…
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この碑文は、かの有名な「千年王国物語」の外伝作品の一つと考えられている。
碑文の文章はここまでであり、そこから先は、様々な展開が詩人達によって創作されている。
騎士がそのまま亡くなる悲劇もあれば、瀕死の重傷を負いながらも、女王と共に魔物を倒す物語もある。
あなたも、自分の思うがままに、この先を想像してみてはいかがだろうか?
フェルディナン・ダンテス著、『「海と空の騎士の物語」に関する考察』より抜粋
海の騎士
実はある島国の大公家の次男坊だった。
けど、戦争の中で国が滅んでしまったので、戦後は仲間達の伝言役として大陸をウロウロしてた。
19歳。
空の姫騎士
大陸の軍事国家のお姫様(のちに女王様)。
この人の父親がトチ狂ったせいで大戦が勃発した。
大義を以って父を止めるためために国を出奔、連合軍結成の中核になり、大戦の黒幕まで片付けたすごい人。
恋愛に関しては奥手。
というか、海の騎士が初恋の相手。それまで恋愛経験0で、剣一筋だった。
これに関しては、王も諦めていたとか…
21歳(兄が王位継承予定だったため、姫のまま)
本編のあと、海の騎士は生きてます。
が、腕に重い障がいが残り、山奥で隠遁生活を送ることになりました。
そのあと、また女王が口説きにきたりで、それだけでも長編が作れそうです。
そのうち普通の小説に書き直したい…