表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/41

“刹那 その3”


『春空の追憶』


運転席から空を見た

ひつじ雲の春の空

跳べない柵を探す


もうすでに

かの春は遠く


どこまで見上げても

あの春空は映らない


あの頃

助手席に慣れて

同時に

あなたの横顔を見慣れた


いつまでも

夢だけを

語るに飽きない日々


その憂いさが

その儚さが

そのまま

ふたりの距離だった



『波音』


こうして

何も言葉交わさなくても

あなたのそばは

居心地がいい


こうして

小さくつないだ指だけで

私は深く

満たされる


近くて遠い

この距離が

多分ふたりの

運命(さだめ)だった


それを泣いた日も

もう意味を持たない


そんなものは

もうふたりに要らない


ただ波音に身をゆだね

このまま

夜を見送ろう



『クリア』


これは戒め

二度とあなたを

縛らぬように


これは戒め

自分の立場を

見極めさせる為の


忙しさにやっと

あなたを振り払えたのに


届いた手紙

真白ななかみ

宛名だけが

私に問い掛ける


“あの指が

この字を書いた”

あまりにクリアな記憶


眩暈がするほどの

懐かしさに

甦る慕情


…でもとか

…だからとか言いたくない


こんなにあなたを

何十年経っても

あの頃のまま

忘れられない私


どこまでも

どこまでも

どこまでもクリア


これは戒め

もう二度とがない為に

私に課せられた


宛名だけの

あなたの文字を

もう一度破いて棄てる


このクリアな記憶だけが

ただひとつ

私に遺る


どこまでも

どこまでも

どこまでもクリア

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ