“恋心その6”
『撫でて』
雨の夜 あなたと歩く
髪が濡れて
あなたは私に言った
「君は暖かいね」
まだ 慣れないの
あなたのそば
呼吸が
かかるほどの距離
まだ 刻めない
その歩幅を
私の記憶の底
染み付かせたいのに
撫でて
私の髪を頬を心を
私のものにならなくていい
あなたのものにならせて
撫でて
ふたりのあいだにある
確かにある絆を
…優しくね
雨の夜 ふたりで歩く
あなたの後ろ姿
肩が濡れて 私は言った
「私を暖めて」
『あてのない空』
今ふっと
何か思い出しそうだった
広い庭園
その人は両手を広げ
あてのない空
何かを受け止めようと
あてのない空
何かを手放そうと
どこへも行けない眼は
どこからともなく
見ることを拒んで
映るのをまかせてる
…思い出せない
今も握りしめる手紙
きっと大切なこと
私がばらまいた
もう一度
この心によぎってほしい
あのあたたかみを
歩いては立ち止まり
影を確かめる
水のない河
存在価値を探し疲れ
天を仰ぐ
水のない河
澱んだ水に息づく光り
心にとどけ
思い出しそうな気がする
記憶の糸解して
この手の中に
降り注げ 希望の雨水
河に流れをもたらせ
あてのない空
握りしめた手紙には
あてのない空
途方にくれる恋慕
あてのない空
いつかたどり着く心は
あてのない空
あなたの必要な
存在になりたい