“刹那その2”
『泣けない涙』
シャッターを閉じた
多分何年も
閉めたままの店の軒先
置きざりのぬいぐるみ
古びた人形
忘れ去られたおもちゃ
…何故でしょう
泣いてる様に見えました
表情のない目が
なお悲しげに映りました
…泣いているのです
寒くて寂しくて
すべてに忘れられてる事が
…泣けないのです
誰にも
気付いてもらえないと
知っているから
どんな寒さより
どんな冷たさより
凍てつくのは心
…私も泣けないのです
出口の見えない痛み
もはや自分自身になった
病んだ心
救いのない暗闇を
ひとすじの光を探して
枯れた頬を確かめる
表情のない目は
あの忘れ去られた
おもちゃ達と同じ
どうしたら
この病んだ感情を伝えられるのでしょう
どうしたら
雪が積もるように
腐敗してゆく心を
温め溶かせられるのか
そのすべを探して
あなたの温もりに
たどり着いたはずなのに
…錯覚だったのかも
あなたなら
私のすべてを
理解くれると
私だけが思い込んで
私だけが納得して
言葉にしなくても
理解あえるなんて
そんな困難を
あなたに押し付けて
どんなにたどたどしい言葉でも
口から出るありのままを
紡いでいけばよかった
そしたら
こんなに寒くならなかったかも
その手に間に合えたかも
こうしてあなたが
隣にいてくれても
彼方のように
遠く感じるのは
苦しさを語れない私の
病んだ心のせい
流すことさえ忘れた涙
行き場をなくし
躯をめぐる
永遠に
あなたという
憧れに焦がれて