talking lovers. Ⅱ
>真雲中学2年編
男二人での珈琲を飲みながらの朝のひと時。
俺はふと思い、登校前の真雲に声をかけた。
「おいマサ、お前好きな子とかいねーのか?」
「何だよ急に。別にいねーよ」
「ホントかよお前!?奥手な奴だな」
「うるせーな、女子なんてめんどくせぇだけだよ」
「お前全然分かってねえな、女性の素晴らしさを。……あの海のような安らかさ、月のような神秘。そして野の花のような可憐さ……」
「いってきまーす」
「待てよ待て」
椅子から落ちそうになりながら、真雲のブレザーを引っ張って引き止める。
ガタガタと元通りに座り直し、コホンと咳払いをして続けた。
「中途半端なくせにかわいい子でも連れてきたらお前なー、あれなー、父ちゃん取っちゃうからな」
「……知らねーぞ?」
「何がだよ」
「……ふ~ん……」
「最低」
はっ!いつの間に後ろに妻と娘がっ!?
まずい、これはまずいぞ……!?
妙に冷たい汗が背中を流れていくのを感じる。
……な、なんだ?
娘に最低と言われることが少し快感になってきているような気がするぞ……。
これはまずいんじゃないか……?
「最低だな父ちゃん」
「お前に言われたくねえよ!」
俺はついに椅子から立ち上がり、真雲に腕がらみを極める。
ふふふ、まだ中二レベルでは、毎日農作業で鍛えたこの俺の力には敵うまい。
「ぐぎぎ……っ!」
「何勝手に怒ってんだよ!父ちゃんが自分で言ったんだろ!……いててっ」
「うるせぇ!まだ毛も生えてねえくせに!」
「関係ねえだろっがっ……!」
「外でやって外で!」
「そうだそうだ!」
「いてっ、何で俺まで!」
妻と娘は結託し、わざわざ箒を持ってきて、俺たちは外へ文字通り叩き出される。
ご丁寧に、二人が外に出た後はピシャッと扉まで閉めて下さった。
「……これでお前も女ってモンが分かったろ」
「ああ、痛いほど分かったよ。……『鬼のような恐ろしさ』って奴なら」
「……だよな」
後で戻って飲み直した珈琲は、もうすっかり冷めていた。