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solaの風景  作者: 安楽樹
15/17

sunset cicada.

BGM:ヒグラシの声

【sunset cicada.】




カナカナカナカナ……




なんて、どうやっても聞こえないけどな。

昔の人は、なんて感受性が豊かだったんだろうか。

俺にはどうやってもこういう風にしか聞こえない。




リリリリリリリリ……




畳の上に寝転ぶのが気持ち良すぎる。

一般的には、ヒグラシは秋が近づいた頃に鳴くと思われているが、実は気温に反応しているようなので、ここでは夏の始めから、夕暮れが近づくと鳴き始めるのだ。




リリリリリリリリ……




この声を聞くと、「この季節が来た!」って感じがするな。


何故かヒグラシの鳴き声は、時間が止まったような錯覚を起こさせる。

そのせいなのか、お昼に素麺を食べた木春は、縁側に座布団を敷いて既に昼寝の体勢だ。

後でタオルケットでも掛けてやるか。


そんなことを考えながら、俺も眠くなってくる。

この時期は、朝早いせいで昼寝の時間が必要なのだ。

日中は暑くて活動できない、という理由もある。

なので早々にお昼を食べて、ごろんと横になって庭を見る。


代わり映えのない風景。季節と共に移りゆく緑。


風さえ通ればかなり涼しい、というのがこの地域の最高に贅沢な部分だ。

湿度も低いので、日陰に入るだけで十分過ごしやすい。

なので、ひんやりと冷たい畳に寝転びながら、ぼんやりヒグラシの声を聞いている。




リリリリリリリリ……




この声を聞くと、夏が終わるような気がしてしまうのは、都会にいた頃の名残だろうか。




……キリリリーン……




風鈴が揺れた。

チラリと見ると、まだのんびり素麺を食べ続けている真雲も、手にフォークを持ちながらウトウトと目が半開きだ。

……危ねえな、フォークを回収しないと……と思いながらも、俺ももう半目状態だった。



あぁ、夏の縁側という楽園よ。

お前はなんて罪な天国を作るのだ……。

この幸福感には、誰も勝てやしない。



いつもなら、とっとと俺より早くフォークを取り上げるであろう妻が静かなのが気になって、再びチラリと目をやると案の定、真雲に釣られたのか妻も珍しくウトウトしている。



……おい、起きろって。



そんな声を掛けたような気がしたのは、どうやら既に夢の中だったようだ。



リリリリリリリリ……



誰も言葉を発さない、真昼の夕暮れ。

辺りには、ただヒグラシの鳴き声だけが時を刻んでいたのだった……zzz


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