rainy days.
【rainy days.】
雨の季節になった。
忘れていたポストを確かめるように、溜まっていた文章を清書する。
他の家族は皆、お昼寝中だ。
雨の音を子守唄に、静かに寝息を立てている。
たまにはこうして、一人の時間を過ごすのもいい。
……ふと目に留めたネットの短編小説に目を通す。
そこに綴られていたのは、憧れと現実の入り混じった田舎での生活の情景。
その中で、一つの詩に目を奪われる。
*
夢見たものは ひとつの愛
ねがつたものは ひとつの幸福
それらはすべて ここに ある と
*
当然ながら、田舎での暮らしは思った通りの事ばかりではない。
……いや、思うように行くことの方が少ない。
ふと、知人の夫婦のことを思い出す。
望みもしないのに、オール電化住宅に住むことになってしまった二人。
こんなつもりじゃなかったのにね、とあははと笑っていた。
自動お湯はりのお湯の量がいつもよりも多すぎて、結局手動でお湯を張る二人。
基本電力量が大きすぎて、下げなきゃね、と笑う二人。
貧乏なのに、こんなにのんびりしてていいのかな、と二人であははと笑っていた。
俺の目には、とても眩しく映る。
……俺たちも、いつまでもあはは、と笑っていられるだろうか。
畑と子育てで忙しくて、それ所ではない時も増えてきた。
でも願わくば、じいさんばあさんになって死ぬその時まで、みんなであはは、と笑っていたい。
窓の外を見る。
きっとまたこの雨雲が去れば、そう思えるようになるのではないだろうか。
……そう、ここなのだ。
堆肥の臭いがきつくとも、
冬の寒さが地獄でも、
機械が農薬をバンバン撒き散らしていても、きっとここなのだ。
それらは全て、ここにある。
引用/『夢見たものは・・・』蒲公英様
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