移民政策を成功させる方法
まず初めに断っておきます。僕は移民政策には反対です。理由は明確で、世界中に失敗例が数多くあり、成功させるのは至難の業だと判断できるからです。
しかし、では、どうして移民政策はよく失敗するのでしょうか?
当たり前に判断できるものに、文化間のギャップ問題があります。文化相対主義と言って、全ての文化に価値の優劣などないというのが現国際社会の一般的な考え方ではありますが、それでも相性が悪く互いに尊重し合うのが難しい文化は存在します。例えば、イスラム原理主義者とキリスト教原理主義者が隣近所で暮らせば衝突が生じるだろう事は容易に想像がつきます。
その為、移民政策を成功させたいと思ったのなら、文化と文化の相性を考えなくてはなりません。
次に労働スキル問題です。
労働スキルが不足してしまっている移民を受け入れてしまった場合、社会全体の負担になってしまう可能性が高いのです。これは経済発展の歴史を観ても明らかです。今でこそ人口が増えればGDPが増えるのが常識のように思われていますが、実はかつては違っていたのです。
――人口が増えると、経済成長するどころか、経済が衰退してしまっていたのですね。理由は“労働スキルの低下”です。人口が増えてしまうと多人数になる事で一人当たりの教育が疎かになり、結果的に労働スキルが低くなってしまうという現象が起きていたのです。
この問題を解決したのが“教育インフラの整備”です。平たく言ってしまえば、“学校教育”ですね。
学校教育が社会に普及することで、人口が増えても労働スキルの低下が起こらないようになり、それからは人口の増加によってGDPが増加するようになったのです(参考文献:『「経済成長」の起源 マーク・コヤマ、ジャレド・ルービン 草思社 320ページ辺りから』)。
ですから、恐らくは、(一部の)移民の労働スキルが低い問題の解決方法も同じでしょう。つまり、“移民元の社会の教育インフラを整えれば良い”のではないかと予想できるのです。
――さて。
では、以上を踏まえて、どうすれば移民政策を成功させられるのかを考えてみましょう。
まずは日本社会と相性の良さそうな文化を持った社会を探すべきでしょう。ただし、既に経済成長している社会の人達は、大量に日本に来てくれそうにはないので、発展途上国限定となるかもしれません。そしてそれが見つかったなら、その社会の教育インフラを整えるように働きかけます(お金はある程度は日本から出さざるを得ないでしょう)。
ここで注意すべきなのは、教育を受けさせるのは「初等教育に適した年齢でなければダメ」という点です。人間の学習能力は幼い時期が特に高いですから、ある程度大人になってからはではもう手遅れなのです。そして、日本社会で働いてもらう事を前提で考えているのですから、日本社会に馴染んでもらう為の教育も必要でしょう。もちろん、日本語を習得してもらうのが最も理想的です。
そして、移民元だけではなく、受け入れる日本側の教育も必要でしょう。相手側の文化を学び、どのような考え方をするのか理解していきます。
もちろん、知識だけでは不十分でしょう。本格的に受け入れる前に、交流を持ち、何度か日本への短期間の滞在を繰り返すという準備も必要になると思います。それで互いに問題がなさそうだと判断できたら、それでようやく移民を受け入れる……
恐らく、これだけやって初めて移民政策は成功する可能性が出て来るのではないかと思われます(強調しておきますが、飽くまで“成功する可能性”です)。
一応断っておくと、この方法、批判も出るはずです。例えば、「移民元の社会を植民地扱いしている」、「判断能力のない幼い子供を洗脳しているのではないか?」、「どうして日本が金を出さねばならないのか?」、「移民受け入れまでに時間がかかり過ぎる」などなど。
更に、計画を具体的に立案し、実行する能力が必要になりますが、今の日本の政治家や官僚にそれだけの能力と意欲を持った人がいるかどうかも分かりません。
僕は“かなり疑わしい”と考えています。
ですから、もし仮にこの方法を実践しようとしても、やはり移民政策は失敗してしまうのではないでしょうか?
僕は移民政策よりも、日本で行われている労働力の無駄遣いを是正する方が、労働力不足問題の改善策としては、より成功する可能性が高いのではないかと考えています。
何故なら、日本は構造的に労働力を無駄遣いしているからです。
僕自身がかつては多重派遣の被害に遭っていた(派遣社員ではないのですがね)ので知っているのですが、日本では未だに多重派遣が横行しています。雇い元からは月に100万円以上も支払われているのに、僕が直接所属している会社に渡って来る段階では半分ほどになってしまっているなんて事もありました。当然、それに関わる無駄な事務処理が発生していますし、営業もたくさん働いています。
これは実質的に労働生産性を下げているのと同じで、つまりは無駄に労働力を使ってしまっているのです。もし多重派遣を完全に禁止にできたなら、その無駄な事務処理と営業分の労働力が浮きます。
他にも日本は中間流通業者が、他の国に比べて多いと言われています。コメ高騰問題で米問屋などの中間流通業者が注目されていますが、日本は全般的にこういった業者が多いのですね。中間流通業者を減らす事ができたなら、労働力を浮かせられます。
もちろん、ライドシェアリングやオンライン診療やオンライン授業、AIなどの最新技術を十分に活用していないという点も問題です。これは規制改革・緩和が進んでいないからでもります。
こういった問題は既得権益とも絡んでいて、ですから既得権益団体の打破とも色濃く関わっているのですが、その為に中々に厄介です。今まで改善して来なかったのは、ほぼ確実にこの所為でしょう。
移民政策に反対している人も多いですが、この他に労働力不足問題を改善する策がないのなら、“労働力の無駄遣い”をなくすよう訴えるべきでしょう。
余談ですが、どれだけ現実的かは未知数ですが、生活保護受給者に労働を義務付ける事も試してみる価値はあるかもしれません。
例えば、特定外来生物、農業害虫の駆除や、資源ごみの回収など、労働コスト面がネックになって進まない仕事を任せるのです。多少はGDPを増やす効果が期待できるはずです。




