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《裏垢魔法少女》ミッドナイト・ヴェノム  作者: リコリスト
第2章 偽善者の聖戦

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6/12

第6話 深淵からの視線

《金曜日・深夜》


家に帰り、宿題を終え、風呂に入り、髪を乾かす。

時刻は23時を過ぎていた。

私は部屋の電気を消し、ベッドに横たわった。

そして、スマホを手に取る。

画面を点灯させる。


《現在のフォロワー:98,520人》


また増えている。

夕方から夜にかけて、さらに1,400人近くのフォロワーが増えた。

このペースなら、明日か明後日には10万人に到達するかもしれない。


10万人。


その数字には、何か特別な意味があるような気がした。

ただの節目? それとも——

私は裏垢アプリを起動し、タイムラインを開いた。

すると——

私のアカウント名がトレンド入りしていた。


「#ミッドナイト・ヴェノム」


タップすると、無数の投稿が表示される。


「この人の投稿、いつも的確すぎて怖い」

「ミッドナイト・ヴェノム、誰なんだろう。会ってみたい」

「こいつ、絶対性格終わってるだろ」

「匿名で批判するとか、クズの極み」


賞賛と批判が、半々くらいだ。


そして、その中に——昼休みに佐々木さんが見せてきた特定投稿の続きが

あった。


「続報。ミッドナイト・ヴェノム、『生徒会書記』という情報あ

り。都内近郊で来週文化祭がある高校の生徒会書記。かなり絞れて

きた」


心臓が、凍りついた。


——特定が、進んでいる。


もう「10代後半の女性」というレベルではない。


「生徒会書記」「来週文化祭」


——それは、私を直接指し示している。


私は急いでその投稿を閉じた。

見なかったことにする。 考えないようにする。

けれど、恐怖は消えない。 私の手は、震えていた。


——怖い。


本音を吐き出す場所だったはずの裏垢が、今や私の首を絞める鎖になって

いる。


《ピロン♪》


通知音。

見ると——


《@truth_seeker さんがいいねしました》


また、あのアカウントだ。

火曜日の夜に現れた、謎のアカウント。

フォロワー0、フォロー1(私だけ)、投稿0。

あの夜、私は返信しなかった。

「君は、何と戦っているのか」という問いかけに、答えなかった。

けれど——

通知履歴を確認して、私は息を呑んだ。

@truth_seekerは、火曜日以降の私の投稿を——すべて「いいね」してい

た。

一つ残らず。 すべて。


「……何なの、こいつ」


背筋が、ゾクリとした。

昼休みに優莉が言っていた。 「変なアカウントから通知が来る」と。

「フォロワー0で、私だけフォローしてて」と。

優莉にも、同じような存在がいる。

@truth_seekerは、一つではない? それとも、同じ存在が複数のター

ゲットを監視している?

私は、@truth_seekerのプロフィールを再度確認した。


フォロワー:0 フォロー:1 投稿:0


何も変わっていない。

ただ、私だけを見ている。


——気持ち悪い。


私はスマホを充電器に繋ぎ、枕元に置こうとした。

その時——

新しい通知が届いた。


《@truth_seeker さんからのリプライ》


タップする。


「10万人まで、あと少しだね。準備はできている?」

「……は?」


準備? 何の準備だ?

返信しようか迷った。

けれど、指が動かない。

このアカウントとは、関わらない方がいい。

本能が、そう告げている。

私はスマホを置いた。

布団を頭まで被る。

けれど、眠れない。

@truth_seekerの言葉が、頭の中をぐるぐると回り続けている。


「準備はできている?」


——何の、準備だよ。


《金曜日・深夜(続き)》


眠れないまま、1時間が過ぎた。

時刻は0時を回っている。

私は諦めてスマホを手に取った。

眠れないなら、投稿でもしよう。

毒を吐けば、少しは楽になるかもしれない。

裏垢アプリを起動する。


《現在のフォロワー:99,847人》


——え?


目を疑った。

さっき見た時は98,520人だったはずだ。

それが、1時間で1,300人以上増えている?

異常だ。

明らかに異常なペースだ。

私は、タイムラインを確認した。

すると——

私の過去の投稿が、誰かに大量にリツイートされていた。

一つや二つではない。 何十、何百という数の「拡散」が行われている。


「誰がこんなことを……」


拡散元を辿ろうとした。

けれど——

画面が、不意にバグったように乱れた。


『ザザッ……』


「え……?」


ノイズのような音と共に、画面中央に見たことのないポップアップウィン

ドウが現れた。

それは、SNSアプリのUIではない。

もっと、異質な何か。

デジタルでありながら、有機的な質感を持つ、奇妙なウィンドウ。

その中央には、文字が表示されていた。


【Congratulations!】 フォロワー10万人達成まで、あと少し!

あなたの『本音』は世界を変える力を持っています 契約の準備を始

めますか? 


YES / NO


「は……? 何これ」


思わず声が出た。

ウイルス? それとも、新手の詐欺広告?

私はウィンドウを閉じようとタップした。 けれど、反応しない。

それどころか——

フォロワー数のカウンターが、まるで誰かに操作されているかのように、

目に見える速度で回転し始めた。


99,848……99,900……99,950……


「ちょ、待って……」


数字が、加速していく。


99,970……99,985……99,995……


「止まって……!」


私の意思とは無関係に、数字は加速し続ける。

画面が、まばゆい光を放ち始めた。

部屋全体が、青白い光に染まっていく。


99,998……99,999……


「待って、止まって、お願い……!」


けれど、数字は止まらない。

そして——


100,000


その瞬間。

スマホが、まばゆい光を放った。

光は画面から溢れ出し、部屋全体を白く染め上げる。

私は反射的に目を閉じた。

けれど、瞼の裏まで光が貫通してくる。


「きゃっ……!」


スマホを取り落としそうになる。

けれど、手が離れない。

まるで、スマホが私の手に吸い付いているかのように。

光が、さらに強くなる。

そして——

視界が、完全にホワイトアウトした。

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