表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/42

霧のような君


月明かりの庭園に、ふと気配があった。

彼女の姿を見つけたのは偶然だった。いや、違う。ずっと探していた。

セーラに形式ばった挨拶をすませたそのあとも、ずっと気になっていたのは、彼女のほうだったのだ。




ルイーゼ


男爵令嬢としてはやや異端な、軽やかで、自由で、近寄りがたく、妙に惹きつけられる娘。


だが彼女の隣には、いつの間にかあの男がいた。


ルーク。


まさかこうして親しげに彼女と並ぶ姿を見るとは思わなかった。


距離が、近い。


微笑んだ彼女の空気に、思わず声をかけるのがためらわれた。

けれど、それでも構わなかった。彼女に話しかけたかった。ただそれだけだったのだ。


「……ここにいらしたのですね、ルイーゼ嬢」


その言葉に、彼女はにっこりと笑って、お辞儀をした。

けれど、期待したような返事はなかった。近寄ったつもりが、彼女の笑みは少しも近づいてこなかった。


「ウィルフレッド殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」


そして、ルークにちらりとも目をやらずに、さらりとこう言った。


「けれど、私はそろそろ戻ります。」


彼女は、そう言って、歩き去っていった。

本当に、霧のような人だ。気づけば手の中には、なにも残っていない。


彼女の背中を見送る自分の横で、

ルークが微かに息をついたのがわかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ