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夜会



ダンジョンのある楽しい毎日を過ごす日々の中でまた別の楽しみがある。

セーラとのお茶会だ。


不定期だが、伯爵家に呼んでくれる。なんといっても毎回おいしいスイーツが出る。


「でね、殿下が頻繁にうちに来るの、このままだったら婚約してしまうわ…」


「いいじゃない。お姫様」


「やめてよ!どうせ婚約破棄されるんだから!はぁ、学園が始まるまで時間がないのに」


「これおいしい。」


「ねぇ!聞いてるの?!」


「聞いてる聞いてる。あ、これも食べていい?」


「ねぇ!!」


初めて会ったころよりずいぶん仲良くなった。

セーラは将来を不安に思っているようだけど、乙女ゲームも詳しくないし、


昔読んだラノベの悪役令嬢たちはみんな幸せになってる。



「そうだ、今度、王家主催のパーティーが開かれるみたいなの。ルイーゼも行くでしょう?」


「まぁ、拒否権はないでしょうね。」


今度は宮殿で夜にパーティーが開かれるそうだ。



「スイーツはあるわよね?」


「あると思うけど‥‥そこなの?」



「お嬢様、今日は一段とお綺麗ですね。」

パーティーのため、綺麗に着飾った私。

貴族の娘とは思えない健康的な筋肉をつけてしまったせいで、体型の隠れるようなケープに、華奢には見えない日焼けした手には手袋をつけている。

それでも頑張って着飾れば、綺麗なもんだ。


「ルイーゼ、準備はできたかい?」



いつ見てもカッコいいお兄様だが、やはり正装はとても美しい。


「はい、お兄様。」

「とてもきれいだよ。」


「お兄様こそ。素敵なお相手が見つかるといいですね。」


パーティーなんて出会いの場。まぁ、私にとってはおいしいスイーツが食べれる場だけど。


「ルイーゼはまだ見つけないでね。」


にこっと笑うと私に手を引いて両親の待つ馬車に向かう。



「ルイーゼ嬢、ごきげんよう」

深紅のドレスを纏ったセーラが、優雅に歩み寄ってくる。


「伯爵令嬢、お会いできて光栄です」

私は一歩下がって一礼する。手袋越しの手に力は入っていない。


「今宵もまた、お菓子を召し上がるご予定でしょう?」

「ええ。王都の名店が手がけたと聞いていますし、楽しみにしておりました」


二人で並んでテラスへと向かい、スイーツが並ぶテーブルで小皿を手にする。


「……殿下がいらっしゃるようですわね」


殿下より、この宝石みたいな苺のタルトの方に興味がある。


その時だった。


「皆様、今宵この場をもちまして、第2王子殿下が正式に王族としての名を開かれます」

司会の声が大広間に響く。


一瞬の静寂。そして、名が告げられる。


「ルーク・グローリアス 殿下」


拍手が広がる中、私は視線をゆっくり向けた。

タキシードに身を包み、表情を引き締めたルークが人々の前に立っている。



「ルーク殿下?え、今?」


セーラが小声でぶつぶつ言っている。

どうやら彼の登場するタイミングにずれがあるようだ。


まぁそういうこともあるよ。

私はスイーツをもう一つ選ぼうとしたら、ウィルフレッド殿下が近づいてくるのが見えた。

セーラに挨拶がしたいのだろう。

私は目が合ったまま、お辞儀をして、その場を離れる。



スイーツ、もうちょっと食べたかった。




賑やかな舞踏会の気配から少し離れた庭園。

月の光が芝を照らし、花々が静かに香っていた。


「やっぱり、ここにいたか」


その声に振り返ると、赤いマントと金の飾りのついた正装姿

見慣れないようで、でもどこか見覚えのある顔。


行儀よくお辞儀をする。


ルークが少しだけ眉をひそめた。


「怒ってると思った」


「何故ですか?秘密は誰にでもあるものですよ。」


そう言って、うふふと小さく笑う。


「殿下はなにかご用ですか?」


「ルークって呼んでくれよ」


「では、ルーク殿下」


「それ、逆に距離できてないか?」


私はくすっと笑った。


「そんなに気にしなくても、私はいつも通りですよ。場所にあった節度ある対応をするだけですよ。」


「……じゃあ、森ではまた普通に?」


うふふ。と笑って、ルークに背中を向ける。


「じゃあ、殿下。パーティー、頑張ってください。お姫様候補がいっぱいいますから」


「……お前もその中の一人なんだけどな」


私はにっこりと笑った。





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