初めてのダンジョン
そして、次の週にまた森を訪れると、彼がいた。
「こんにちは、ルークさん」
森の奥に進んでいると彼が休憩しているところに出会った。
「お前は、ルイーゼだったっけ。」
「覚えてくれていたのですね。私もこの森に魅力を感じてまして、また来てしまいました。」
「そうか」
スッと立ち上がって前を歩き始めた彼は、怒っている様子もないし、ついて行くことにした。
「この先にダンジョンがあるんだ。よかったら...」
「あら!ダンジョンですか!是非一緒に行きましょう!」
ダンジョンだって!初めてだ!
森をしばらく歩くと、洞窟があった。ここがダンジョンらしく、少しはいると外の明かりも見えなくなるほど暗い。
中はジメジメしていて、少し進むと光もないのに草原がある。
「ここは、草属性が多いダンジョンだ。生態系は外とは関係なくて、独自の魔物も多い。」
草属性!私の得意なのは火属性だから相性バッチリ!
「あれはなんですか?」
洞窟の中の草原の上には大きな蜂の巣があった。
「やべぇ、ポイズンビーの巣だ!」
ポイズンビーの巣!まだ魔石は手にいれてない!いいタイミングだし、あれやってみたい。
「ちょっとやってみたいことがあるんですよ。」
「は?」
しっかりポイズンビーの巣に狙いを定めて、火力マックスで!火魔法を使ってみたかったの!
手をかざし、思いっきり魔力を込めると、大きな火柱ができ、ポイズンビーの巣はあっけなく消し炭になって、魔石がボロボロと落ちてきた。
「わー!魔石だー!しかもこんなにいっぱい!1個だけ透明度がやたら高いのがある。」
「まじかよ...巣ごと一撃で焼き払うなんて...その透明度が高い魔石はポイズンビークイーンのものだ。ポイズンビーとは段違いに強い。」
「へぇ〜巣に一個って貴重な魔石なのですね〜」
キラキラした魔石をしっかり眺めて一つ残らずバックに詰める。私のコレクションは数は別に必要じゃないから、重なったものはより透明な方を選んで、売ってしまう。
魔石は魔道具になるし、また魔道具を買うための資金にもなる。
「今日はもう戻ろう。」
日帰りのダンジョンだ。あまり深くまでは進めない。楽しみを取っておくように少しずつ進めていこう。
帰り道でルークがふと、足を止めた。
「そういえば、お前、前は水属性使ってたし、今日は火属性を使ってた...俺の見間違えじゃなければそれって勇者様以来の複数属性の持ち主って事...になる...が」
途切れ途切れに戸惑っているような話し方。そっか、めずらしい事だもんな。内緒にしておいたほうが私のためだ。
「内緒にしてくださいね。」
ルークは考え込むようにしばらく黙った。
「いいのか?複数属性持ちとなれば、嫁ぎ先は選び放題だ。貴族や王族からも声がかかるだろう。」
私はルークの前に立ち、
「そんなことはどうでもいいです。必要なのは魔石集めに出れることだけですから。」
「そうか、そんな気がした。」
ルークが笑って、顔を手で擦るとその顔はいつできたのか小さな切り傷ができていて、ピリッと痛そうな顔をした。
ルークの顔に手を当てて、光魔法で傷を治療する。これぐらいなら私でも治せる。
「だから、内緒にしていてくださいね。」
ルークはびっくりした顔でしばらく固まっていたから、私は1人帰り道を進んでいくと後ろからドタドタとルークが走ってくる。
「お前!なん、なんで光魔法までっ!ルイーゼ!」
「内緒です!」
私も追いつかれないように走る。
もうすぐ王都に着く。
「じゃあ、また来週。よろしくお願いします。」
私は少し距離の空いたルークに礼をして、王都につながる門を目指す。
「え、あ、あぁ!また来週!」
なんとも楽しい時間だった。