冒険者との出会い
王都に来てから、剣の先生はいなくなり、森にもいかなくなった私は、暇を持て余していた。
「マリー、近くに魔物の出る森なんてないのかしら」
「お嬢様、せっかく王都に来たのにまたそんなことを・・・でも、屋敷の近くに王国の出入口がありますよね。」
「あら、そうなの?」
王国を出れば、そこは壮大な自然。つまり魔物がいっぱい。出入りには身分が証明できればいい。
「準備しないと」
またマリーが呆れたように笑った。
そしてまた週に一度、魔物を狩りに屋敷を抜け出す日が始まった。
王国の外は草原が広がっており、少し向こうには森も見える。やはり王国の外には図鑑でしか見たことない魔物がいっぱいだった。王国に近いし、草原だし強い魔物もいないのかもしれない。森まで行ってみようかな。
次の週、森まで行ってみた。
森に入ってすぐ、魔物の多さや強さにわくわくする。初めて倒したシルバーウルフの魔石を光に照らして眺めていたら、近くで大きな音がした。
その方向に行くと、レッドウルフと青年が戦っていた。どうやら、青年は利き手を怪我したようで劣勢だったので、水魔法でレッドウルフを倒した。その青年はずぶぬれになってしまった。
「あ、ごめんなさい。」
「いや、いいんだ。ありがとう。」
同い年ぐらいの青年。手はずいぶんと痛そうだ。どうやらレッドウルフにひっかかれたようだ。でも、勇者様にかんたんに治癒魔法を使うなと言われているからな…
「手、貸してください。」
素直に手を差し出してくれる青年の腕に、持っていた医療キットで処置していく。そもそも完治してあげられるほどの治癒魔法は使えないけど、包帯を巻いた腕を優しく押さえて、今の痛みが和らぐくらいの治癒魔法をかける。治癒魔法は目に見えるものではないから、これぐらいじゃばれないだろう。
「ありがとう。楽になったよ。君は?冒険者?」
「あ、いえ。魔石をコレクションしてる人です。」
「え?魔石を?」
「はい。きれいなので」
「キレイ?」
「はい。」
ほら。とさっき倒したレッドウルフの魔石を見せる。レッドウルフの魔石は5㎝ぐらいあって、輝きがわかりやすい。
「変わった趣味だな・・・」
「そうですかね。」
そういいながらポケットに魔石を入れる。
「ここにはよく来るのか?」
「いえ、あ、でもこれからは通いたいと思います。」
「そうか」
「お前、名前は?」
「ルイーゼです。」
「俺はルーク。今日はありがとう。じゃあ、また。」
また?彼もここによく来るのかな。だったら一緒に行動したいな。
魔石がもっと集まりそう