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白崎直人と草むしり②

 教室に戻り、おとなしく午後の授業を受ける。帰りのHRの時間に、その用紙は配られた。用紙の内容は、簡単なアンケート。箇条書きにされた校則について、知っているかどうかを右にある<はいorいいえ>で選択する形式で、一番下には、【学校への要望】を記入する欄が設けられている。


 作成者は言わずもがな、生徒会だ。


 俺は、机の上に置いてあった筆箱から黒インクのボールペンを取り出し、ちらっと横に目を向ける。圭は、満足そうな顔で手に持った用紙を立てて眺めていた。呟くような声で「頑張ってんなぁ」と、言っていた圭は、どこか自分のことでもあるかのように、誇らし気だった。


 ああ。こういう奴と友達になれたのかと思うと、俺もまた、なんだか誇らし気な気分だ。


 だけれど。どうやら俺が想像していた以上に、いや、本当は想像すらしていなかったのだけど、とにかく、現生徒会のウケは、あまりよろしくないらしかった。


「めんどくさ。なんで、こんなことしないといけないんだよ」

「知ってても知らなくても、どうでもいいっしょ。どうせ、可愛い女子は全部免除っしょ?」


 可愛い、のくだりの発言は、あの三人の女子の内の一人……ええと、名前はなんだったか。


「新しい生徒会長、真面目過ぎて苦手なんだよなぁ。確か、三組の奴だよな」

「俺も無理。この間なんてさ、ちょっと遅れて家に帰ろうと思って駐輪場の所にいたら、「さっさと帰れ」なんて言ってきやがってさ」

「うわ、めっちゃ上からじゃん。王様にでもなったつもりかよ」


 今日の昼、青川海斗のことを知ってしまったことを後悔した。友達の幼馴染なわけで、別に距離の近い人間ではないけれど、良い人っぽいのは見て取れたし、だからこそ、彼への誹謗中傷を耳にするのは、心苦しい。


「大丈夫か、圭」


 そっと聞いてみる。俺よりも遥かに、心が痛いはずだ。


「腹立つけど、しゃーないだろ。真面目キャラって、基本嫌われるし。それに、あいつもそのこと分かってるだろうしな」


 歯ぎしりしながら言ってのける。感情に任せて行動してしまいそうな見た目なのに、外面と内面が反発でもしあってるのか?


「でも、嫌われキャラのままっていうのも辛いだろうな」

「直人は一部の人間に嫌われて、丁度いい塩梅になったけどな」

「あれ? やっぱり見た目通り? デリカシー、何処に捨てて来たんだ?」

「わりかしデリカシー、あるつもりなんだけど」

「対象が俺の場合は、わりかし外ってことか」

「わりかしな」


 俺たちがくだらない会話をしている間も、生徒会長含め、生徒会への不平不満が飛び交う。生徒会のせいで嫌な思いをした、という声を主体として、関係のない言葉がそれに呼応するように教室を包んでいった。


 耳をそばだててみるとよく分かる。生徒会に対して本気で憤っている人間は、極少数でしかない。


「学校への要望かぁ……」


 人付き合いの下手な俺だから、人間関係で色々と悩みはあるけれど、ランプの魔神じゃあるまいし、そっち方面の悩みを書いても生徒会長、困るよなぁ。魔神との共通点も、【青】ぐらいしかないし。


 などと、呑気に考えていると、当の本人がランプからではなく扉を開けて廊下から現れた。生徒会長が教室内に入るや否や、雨あられの言葉がピタッと止んだのは、人間らしい気味悪さを感じた。


 生徒会長自らそれぞれの席に行きアンケート用紙を回収して行ったのだけれど、俺の二つ前の席の周囲一帯、そこの男子生徒たちはくすくすと、いやらしい笑みを見せて、教室から出て行く生徒会長の背中を眺めていた。


「やべぇ。思わず書いてしまった【ハーレムを作ってください】ってやつ、書き直さないまま海斗に渡しちまった。匿名だったし、ばれないよな?」


 幼馴染の叱責に怯える子犬の様な圭の姿が、少し荒みかけていた心を慰めてくれた。

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