07 騎士見習い (前)
あの後、色々と説明を求められたが何とか言い訳で誤魔化しとおした。
そして今は騎士道の授業中、場所は何故か教室。
「で、貴様らには四人一組のチームを作ってもらおう」
ガヤガヤ、わいわい。
―五分後―
「よろしくね、コウヘイ」
「お姉ちゃんがすいませんでした」
「いや~ こんなきれいな子と組めてワイは嬉しいわ~」
「……不幸だ」
さぁ、なぜ俺がこうも意気消沈しているかというと、アリスことトラブルメーカーのせいだ。
いきなり、「アンタめちゃくちゃ強いから組みなさい!」と涙目の妹を引き連れて恐喝。
その言葉を聞いた男子共からは憎しみと嫉妬と反感の視線で攻撃され、
最後にはエセ関西弁(こっちでは南の方言なんだそうだ)が
「羨ましいからワイも混ぜてな~」とアリスに土下座で懇願し、今に至る。
「よし、それじゃー このチームの名前を決めましょう!」
「お、お姉ちゃん」
「えぇな、ワイ的には『美人姉妹+婿候補』ちゅう名前がエエな」
「はぁ? 何言ってんのここは『デンジャラス・デス・クイーンズ』よ」
「お姉ちゃん、クイーンズは変だと思う」
言いたい事は山ほどあるけど、ここは言わせてもらうおうか。
「お前ら自己主張しすぎ~! 人の話を聞け~!」
「……」
「……」ブルブルブル。
「……」
よし。
「じゃあまずチーム名から決めようか、意見のある人は挙手」
バッ! とアリスとエセ関西弁が挙手した。
「はい、じゃあアリス」
「『デンジャ「却下します」なんでよ!」
「なんでって、カッコ悪いから」
ド~ン。
アリス撃沈。
妹に慰めてもらってる……なんか負けた気がするのは気のせいだろうか。
「エセ関西弁」
「なんやそれ、ワイの名前はエセ・クワァン・サイや」
「……エセ関西弁じゃ、ダメか?」
「名前はおうてるけどな、なんかバカにされてる気がするんや」
「そんな事、ない。親しみを込めたあだ名だ」
「……ならえぇよ」
少し気に入らないようだが、まぁいい。
まさかこんな笑いの種が現れるとは、神様この世界めっちゃおもろいでぇ。
「で、エセ関西弁。意見は?」
「あぁ、そうやった。ワイは『美じ「却下、もう喋るな」グスッ…」
「妹はなんか意見ある?」
「妹じゃ、ないです。ユリアです。」
「じゃあユリアちゃん、意見ある?」
「……」
なんで頬を赤く染めて沈黙するの、なんか凄い事迫ってるみたいじゃん俺。
「じゃあ『七班』に決定~」
「「えぇ~」」
明らかに納得のいっていない声だが、俺は声を上げなかったユリアに話を振る。
「ユリアちゃんはどう思う?」
「…いいと……思います」
だから頬を赤らめて言うなって、なんかこそばゆいから。
「ユリア、裏切ったわね!」
「そうやで~ 七班なんてありふれたモンでは世界は目指せんのや!」
「いや、別に世界を目指す意味はないだろ。俺らは一応学生だぞ」
関係あらへん! とエセ関西弁は言い張るが、
ユリアが「だって一番まともな名前だったから」と
二人のネーミングセンスの無さをえぐり、アリア&エセ関西弁撃沈。
―闘技場―
さぁ所場所変わってここは闘技場、武を交わす場所さ。
「さて、明日は早速グリードの森に野外実習に行くが、『えぇぇえぇぇぇぇ! 聞いてない!』言ってないからな」
何て言う先生だよ、こんや奴が騎士道教えんのかよ!?
っていうか騎士道語っちゃダメだろ!
「実戦でこそ人間の真価が問われるんだ。実戦こそ一番の練習だ! 文句は言わせん」
言えないっつうの、言ったら成績下がりそうだから。
「いいか、貴様らは『騎士見習い』だ。まだ『騎士』じゃないって事を肝に銘じとけ! 軽々しく『騎士』なんて口にしたらキツイ罰を与えるからな!」
沈黙。
まぁそうなるわな。
にしても、結構きびいしいですね先生。
「よし、早速チーム代表同士で戦ってもらおうか。ちなみに勝ち残った代表のチームには例年通り金貨10枚が出るぞ」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
金の話題になったとたんコレか、っていうか金貨10枚ってどれくらいの価値があんだよ。
『神様が教えてあげましょう!』
居たの?
『いえ、性格には"見てた"ですよ』
あっそ、そんな事より教えろよ。
『はい、はい。この世界のお金の仕組みはこうです。銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚、金貨百枚で大陸金貨一枚。といった感じですね~ ちなみに銅貨一枚、百円くらいなんですね~ だから金貨10枚っていうのは』
一千万!?
「よ~し、絶対勝つぞぉぉぉ~!」
『全く、話は最後まで聞いて欲しいものですね。ちなみに平民と呼ばれる人たちの平均年収は金貨1~2枚です♪ そしてコウヘイが壊した水晶一個の値段は金貨100枚なんですね~ ふふっ』
―予告―
第8話 騎士見習い (後)
コウヘイは神に願う、強くなりたいと。神は応える、対価を払えと。コウヘイが払う対価は―――
そして賞金の行方は。