53 各々の戦争
久しぶりの更新だ…
なんかもう、リアルが忙しすぎた。←言い訳ですね
―エセ関西弁―
まず手始めに互いに剣を一振りする。
ぶつかり合う剣と剣、オーウェルの太刀筋は今も昔も変わらず一級品だった。
エセ関西弁も剣才はある方だと言われきたし、自覚もしているが、それでもオーウェルを"強い"と感じていた。
「強いな~」
「鍛練は欠かさずにやっていますから、殿下も変わらないですね…ッ!」
オーウェルは巧みな剣捌きでエセ関西弁の剣を逸らし、間髪を容れずに一閃をいれて来るが、
「おっと、危ない危ない」
エセ関西弁も鍛練は真面目にやっていたので、勘が鈍る事はなく、以前よりも鋭さを増している。
「ならば…土棘!」
「チッ、吹き荒れろ、旋風!」
地面から無数の棘がエセ関西弁へと飛び、オーウェルは速攻を掛けて来るが、
一陣の風で棘はあらぬ方へと進路を変え、エセ関西弁はオーウェルを迎え撃つべく、剣に風を纏わせて地面を一蹴りする。
ガキンッ!
刀身と刀身は火花を散らしてぶつかった。
鍔迫り合いという言葉が似合う状況がこの場に生まれる。
「なんやこうしてると、昔を思い出すなぁ」
「そうですね。毎日のように剣を交えていました。あの時までは!」
オーウェルは力任せに剣を振り抜き、エセ関西弁は後ろへ下がる。
「なぜ、なぜ我々にすら黙って姿を消されたのですか?」
「言ったやろ、自由が欲しかったんや。その為にはワイの正体を知る人間はな、側に居て欲しくなかった。例え忠誠を誓ってくれた戦友でもな」
「……そうですか、残念です」
「まぁな、お前の気持ちも分からん事はないが…諦めてくれ。戻る気はサラサラないねん」
「ならば、ここに居る理由は何なんですか? 殿下は昔から家族という物に興味はなかったはずでしょう?」
「ありゃ、バレとったんか。上手く演じとったつもりやけどな~」
あはは。と、髪を掻きながら笑い声を上げるエセ関西弁。
オーウェルはそんなエセ関西弁の姿を見ても、決してその強張った表情を変える事はなく、その双眸はエセ関西弁を逃すまいと見開かれていた。
「……その眼には昔から敵わんわ~」
そして―――実話な。という言葉でシリアスな表情にエセ関西弁は変わった。
「この近くにはな、ワイが帝国を出てから世話になっとった村があるんや」
「その村を守りたい。と? しかし逃げ出す時間は十二分にあったと思いますが」
「いやな、あの村はちょっと特殊やねん」
? オーウェルの脳内はこの記号が行きかっている。
「掟っちゅうもんがあってな、誰一人としてそれを破ろうとせんのや」
「どんな掟なのですか?」
「そんな複雑ちゃうで、簡単な事や、この村から出てはいけません。ってのが掟」
「……この情勢でも、逃げないと?」
「そうやろうな~ ワイとしては逃げて欲しいけど、頑固なんよ。やから、ここから先は通さんで」
エセ関西弁の顔から笑みは消え失せ、決意の籠った鋭い眼は獲物を狩る獣そのものだ。
オーウェルは唾を飲み込み、今一度剣を構える。
その動作に連動するようにエセ関西弁も自然と構えを取った。
ジリジリと緊張の威圧がせめぎ合い、今か、今かとその時を探り合う。
そしてオーウェルの顎から一粒の汗が落ちた瞬間、その時はやって来た。
「ハァァ!」
エセ関西弁が前へ出る。
「ウォォォ!」
オーウェルは一歩遅れるが、何ら躊躇う事無く剣を振るう。
エセ関西弁が横に一閃すると、オーウェルは地面を魔法で盛り上げて防ぎ、
オーウェルが突きを放つと、エセ関西弁は風を巧みに操り剣の軌道を逸らす。
反撃とばかりにエセ関西弁が風で作り上げた凶刃を不可避の軌道で放つと、地面から鉱石が見えないはずの凶刃の軌道を見事に塞ぎ、オーウェルは前へと駆けて袈裟に斬りつける。
しかし、斬ったはずなのに手ごたえが皆無だった。
「偽物!?」
オーウェルはすぐさま周囲を警戒する。
自身の五感をフル稼働させエセ関西弁を探るが、視えず、聞こえず、感じず、匂わず、もちろん味もない。
完璧に消失したとしか思えなかった。
「どこに…ッ!」
オーウェルは無意識に屈んだ。
「さすがやなぁ、今のも避けるんかいな」
後ろから聞こえて来たエセ関西弁の声、オーウェルは立ち上がり後ろを向く。
「風を操り蜃気楼で惑わせ、匂いを消し、気配まで消すなんて……とんだ成長っぷりですね」
「おおきに」
オーウェルは冷や汗が止まらなかった。
表情にこそ出していないが、今のやり取りで解ってしまった。
自分とエセ関西弁との差が、絶対追いつく事の敵わない場所へいる事が、海よりも深い葛藤が、愛憎にも似た感情がオーウェウルの中を駆け巡る。
「さて、そろそろ決着をつけようか?」
「望むところ」
「「いざ!」」
「「尋常に勝負ッ!!」」
二人の影は刹那という時間重なり、すぐにすれ違った。
そして、騎士は大地にその身を委ねる。
―次回予告―
第54話 各々の戦争(2)
エセ関西弁とオーウェルの決闘に決着がついた頃、コウヘイはフェルトと対峙していた。そして激動の戦争は人の域を抜け出る。