40 皇女の憂い
―第三皇女執務室―
「殿下、御気分でも悪いんで?」
「いいえ、ただ……」
違う、私は―――
「皇帝陛下のお決めになった案ですか」
「えぇ」
そう、なぜ父上はあそこまで冷酷になれるのか私には分からない。
「しかし陛下の案は今の国民感情からすれば適当なものかと」
「そう、ね」
確かに、城を壊され、皇子を殺された国の民達からしてみれば、報復は納得いく物…でも、それでいいの?
それとも私に王としての資質がないだけ?
「…気分転換にセラス翁の所へ行ってみられればどうですか?」
「いえ、きっと今は忙しいでしょうから別の機会に行きます」
「そうですか」
全く、騎士にここまで心配させてはダメだよね、今皇族に求められているのは毅然とした態度で居る事なのに。
「ねぇ、貴方はこの戦いには賛成?」
「はい」
「それは聖人だから? それとも騎士だから?」
私の騎士は眼を瞑る。
一呼吸置いて眼を開け、
「私が帝国の国民だからです」
と、誇らしく答えた。
「なら私は尚の事反対する事は叶わないわね、陛下から次期皇帝を宣告されてしまったんですもの」
「殿下……」
「最後に、私がもし陛下の案に反対したら貴方は私に着いて来てくれる?」
「私は殿下の騎士ですから、我が剣は殿下と常に」
そう言って膝を付く、あぁ、私はなんて恵まれているんだろうか。
私の我儘でこの忠誠を滅びの道へ誘うの事なんて…できないよ。
あー あー、私ってホントダメだな、迷ってばっかりだよ。
こんなんだから姉様達に命を狙われるんだろうな、こんな人間の下に何か付きたくないよね。
「そう、席を外してもいいよ」
「はい」
「さて、私は私にできる事をしなきゃね。一人でも多くの人を救える道があるといいな」
―次回予告―
第41話 信仰を集める愚者の最期
法王は信じた道を進むが、立ちはだかる壁はあまりにも大きく、自身が信仰する神すらも乗り越える事が叶わない壁だった。