37 大戦の兆し
―法王執務室―
そこには黒い外套に身を包んだ男と、豪華に装飾された衣服をまとう老人の姿があった。
「デロベセット枢機卿から神器『殲滅姫』を回収してまいりました」
「うむ。特務御苦労、これで我が手中に三つの神器全てが揃った」
「はい。長かったですな」
「あぁ、これで漸く教会長年の大望が成就される」
「……世界の統一」
「百二十三代、私の代で先人達の想いが報われる。そして世界は一つに…まずは帝国か」
その頃、コウヘイ一同は法王のお膝元まで来ていた。 by神様♪
「さて、あのデッカイ教会っていうか城? に法王はいるんだな?」
「そうや」
「でも、どうやって法王様に?」
「そうよね。ここはやっぱり王族たるこの二人の出番だと私は思うのだけれど」
そして俺達四人の視線はマリアとシャーリーに。
「でも、法王様はお断りになるでしょうね」
「あぁ、間違いなくそうだろうな。剣は間違いなく総本山たるシュベルツ教会にあるから」
「俺的にはさっさと奪い返して旅を終えたいんだけど」
「でも、どうやって奪い返すんや?」
「そりゃー 力ずくで―――」
「それはダメです! ミレ教の信徒は大陸中に居るんですよ? コウヘイさんが危ないです!」
お、俺の心配をしてくれるのか!?
ふふ、あははははは!
よし、決めたぞ!
「じゃあ穏便という方向で行こう!」
「さすがのコウヘイも美少女には勝てなんだか」
そこ、呆れるな。
美少女は世界の宝だ。
そこら辺Bばかりじゃ人間滅ぶんだから。
っていうかお前は俺と同種だろ!
「でも穏便にとは、どうやるつもりだ?」
「それが問題なんだよな~ 派手にやるのなら俺得意なんだけど」
「御二方でも断られるのに、貴族である私たちでは応接室にすら通してもらえませんよ?」
そうなんだよな。
穏便にってもどうしたもんかなぁ~
忍び込むくらいなら出来ない事もないんだけど、あの教会…厄介な結界張ってるしな~
つうかアレ人間には張れないだろ、張ったら廃人確定だし、天使式の術式だから。
壊せない事もないけど…壊したら悟られてウジャウジャ敵が出てくるし。
「ホント、どうしたもんかな」
そんな弱気な言葉をもらしながら俺は教会を見上げる。
その時だった。
教会から眩しい光の柱が空に上がったのは。
「な、なんや!」
「ま、眩しい」
「攻撃か!?」
「ちょっ、コウヘイ! あんた!」
「おいおい、俺は何もやってないぞ!」
「お、お姉ちゃん、落ち着いて」
光は西の空へと飛んで行った。
―同時刻・ゼリッシュ帝国 帝都ゼノン―
ゼノンにある皇帝が住まう居城に眩い光が着弾し、帝都は混乱状態に陥っていた。
謎の光によって第二皇子と大臣数名が死に、城の三分の一が崩壊、帝国軍は至急帝都に防護結界を展開して第二波に備え、帝都に帰る途中だったフェルト一行は馬を急いで走らせた。
ゼリッシュ帝国皇帝は軍上層部六人を地下の会議室に緊急招集していた。
「陛下、帝都の防護結界は滞りなく終えました」
「フェルト姫はまだ御帰還なさっておりませんが、聖人たる騎士を一人付けてあるので問題は無いかと」
「うむ。それで攻撃は確かに東の空から参ったのだな?」
「はい。報告ではそのようです」
「まさか教国が先制攻撃などしようとはな」
「やはり王国の秘宝が盗まれた件は本当でしたか」
「あぁ、間違いなく神器だ。アレは、王国に連絡は?」
「すでに」
「よし、反撃の準備を整え次第…報復に移る」
「「「「「「御意」」」」」」
皇帝の瞳には怒りの炎がメラメラと燃え上がっていた。
―予告―
第38話 教会騎士団
コウヘイ達を討伐しようと教会は動き出し、聖人有する教会騎士団が迫る。そして教国の聖人と王国の聖人は出会う。