36 王剣の行方と法王の影
はぁ~ 進まない……どうすればいいだろう。
「おい、何をやっている」
「いや、これ。別に」
そしてマリアの視界に無残にも砕け散った剣が入った。
ニコッ。
それは今まで見た事のない様な笑顔だった。
目は笑ってなかったけど。
怖いのなんのって、あんな目で笑顔向けられ続けたら発狂しそうだよ。
「これは、どういう事だ」
「えーと、枢機卿の存在を抹消したら、持ってた剣が床に落ちて」
そこまで俺は言うと、無残な剣に視線をやる。
そして納得したのかマリアは「なるほど」と、呟き何故か剣を鞘から抜いた。
「そこに直れ。私が直々にその首、取ってやろう」
死刑宣告ですね。分かります、でもね!
「ワザとじゃないんだ! 意図的でもないし、偶然の産物なんだ! だから勘弁してください!」
ザ・土下座。
日本人なら誰でも知っている謝罪の最終奥儀、これを受けたならば心が揺れる事間違いなし! …通常の人間なら。
「なんだ。そんな姿勢じゃ斬りにくいじゃないか、もう少し顔を上げろ」
クソ! やっぱり文化の違いは乗り越えられなかったか。
俺の人生はここで終わってしまうのか? まだ彼女すらいないのに、俺のハレームは!
(だったら一人くらい押し倒しちゃえばいいのに)
か、神様ッ!
(なに? そんなに驚いちゃって)
いや、だって久しぶりの登場だったから。
(いや~ 急に仕事が入っちゃってね)
な、神様が…仕事をしただと……ッ!
(なに君、そんなに死にたいの?)
ゴメンナサイ。冗談デス、許シテクダサイマシ~
(まぁいいや、それよか何でこんな美女揃いなのに押し倒さないの?)
いや~ やっぱお付き合いするなら互いの気持ちをですね
(王道がいいと)
まぁ要するにそうですね。
(でも、このままじゃ死ぬわよ?)
大丈夫、そこはきっと主人公補正で乗り切れる!
(でも、貴方の首を断とうとマリアの刀身が)
「うぴゃぁぁぁぁ!」
パシュ。
と、ヒラヒラと髪が二、三本宙を舞った。
「何故避けた?」
「いや、普通やる!?」
「えぇい、潔く死ね!」
「それが本音か!」
何て事があった十分前。
はぁ~ シャーリーが止めに入ってくんなきゃ本当に俺死んでたな。
「それで、本当にこれは偽物なのか?」
「うん、間違いない。巧妙に隠蔽されてるけど、剣の気配は移動してる」
「方角は?」
「首都の方へ」
「おいおい、そりゃー どういうこった。黒幕はあのデブだったんじゃないのか」
「コウヘイの言いたい事も分かるが、この国は色々と裏が深いんだ」
「まさかとは思うけど、法王が一枚噛んでるかもしれない」
「そうだな。シャーリーの言うとおりかもしれん」
溜息ばかりが出る。
解決したと思えば、はい次の謎をどうぞ。と来た。
ややこしくて仕方ない、この際この国を吹き飛ばすか? 何て考えてしまった俺は何も悪くないはずだ。
だってそう思っちゃうくらい、マリアが怖かったんだもん。
八つ当たり? あぁそうですよ。それが何か?
「さて、まずは全員集合! と行きましょうか」
そう言って俺達は全員集合! を目指して歩き始めた。
んで一時間後。
「じゃあフェルト姫と騎士さんは王国へ報告兼避難と言う事で」
「解りました。では姫、行きましょうか」
「さて、俺達も法王さん目指していきますか!」
「はぁ~ 教国の女性はみんな頭固いっちゅう話しやし、ワイは行きたくない」
「じゃあ私の剣の錆になるか?」
「いえ、ぜひ行かさせていただきます!」
―予告―
第37話 大戦の兆し
世界は向かう、一人の男の野望の為に、迎えるは戦乱の世か?