25 エリーゼの暴動(鎮圧編3)
―コウヘイ―
「おいおいおい、人外?」
「まぁな、人ではないな」
こんなやり取りを始めてすでに五分ほど経とうとしていた。
暴徒化した一般市民を十秒で制圧せよ! って感じのノリでやってたら、いきなり現れたんだよねコイツ。
見てくれは人だけど、人じゃない感じがするし、もう俺なみにハテナ生物だよ。
「俺と同種か?」
「いや、少し違うな。だが神秘は持ち合わせている」
「ふ~ん……御堕神(元神)の部下?」
「…正解だ。よく解ったな」
「いやね、一人心当たりが居るんだよ。こんな事仕向けてきそうな幼女をね」
神様~ 仕組んだな!
中々進まない展開に飽きて、強引に引っ張ってきたな!
賊の時間稼ぎとかじゃない気がする、そうかもしれないけど、絶対あの人が一枚噛んでる気がする!
「で、俺に何の用なの?」
「そうだな、そろそろ戦闘開始と行こうではないか」
「それには賛成、二人の方もケリがついたようだし」
全く、エセ関西弁は実力を隠したままだし。
何かと言ってマリアは俺にいちゃもんつけてるし、このパーティーに不安を覚えるな。
あぁ、まだアリスもいたっけか。
「死ねっ」
「ちょっ!」
いきなり魔力刃飛ばしてくんなよ。
まぁ俺なら簡単に防げるんだけどね。
「仕方ない、殺りますか」
俺は意識を集中させ、新たな試みをする。
「日本神話より抜粋、我召喚するは"天照大神"!」
一、二歩進んだ辺りに魔法陣が浮かび上がり、辺りを瞬く間に神力が覆い、アイツは両膝を地面についた。
「ヤレヤレ、久しぶりに降りて来たら戦場とわのぉ~」
うぁ~ めっちゃ美人だわ。
さすが神様、どっかの幼女とはえらい違いだな。
大和撫子、和風美人、とにかく着物が身体の一部のように美しい。
ヤベ、惚れる!!
「で、主が我を呼んだのであろう? 何ようかな」
「え、えーと」
俺は視線をアイツに合わせる。
「ほぉう、また珍しいものが現世に降りてきておるの」
「全く、神すら降ろせるなんて。とんだ能力だ」
「小童、我の神力に当てられたのか」
「あぁ、俺程度の神格じゃ……貴女の前に立つ事は、不可…能だから、な」
「かなり憔悴しておるのぉ~ どれ、今楽にしてやろう。それが我を降ろした者の望みだからな」
天照大神が値段を付ける事はできないであろう扇子を開き、アイツに向けて仰ぐと、アイツの身体は一瞬にして蒼い炎に包まれ、灰すら残さず消えた。
「さて、願い。確かに叶えたぞ? また読んでくれよ、暇なんじゃ」
そう言い残して、光の粒子のみが宙を漂っていた。
「う、うぉぉぉぉぉぉ! 神スゲ! 神スゲ! めっちゃ綺麗だったぁぁぁ!」
なんだろう、今までの常識が音を立てて崩れていく。
新しい常識はあのお方だ。
次あったら告ろうかな?
―予告―
第26話 エリーゼ暴動(解決編)
鎮圧を終えた一同はエリーゼを後にする準備を整え、道を進むべく街を後にするが―――