22 エリーゼの暴動
強烈な光で目を瞑り、次に目を開けると、
俺の目に飛び込んだ光景はどこぞの指令室を思わせる光景だった。
「な、う、撃てぇ!」
動揺も束の間、一人の男の叫び声によって光球がこちらへ飛んでくる。
が、マリアによって光球は切り裂かれた。
「お、王女殿下!」
今度の声の主は身なりも整っており、どこぞの貴族と見て取れる男だった。
「統括官、一体何があった?」
マリアは聞く、それも物凄いプレッシャーを放って、かなりご機嫌が宜しくないらしい。
「それが、突然だったもので何が起こったか。ただ警備の者によると黒いフードを被った者が黒い霧を発した途端に民達が暴徒と化したようで、何かしらの魔法か薬による物だと我々は推測いたしています」
「まぁ十中八九そうだろうな、で。どうやって事態を治めんの?」
「手っ取り早いんは、全員気絶させて治癒魔法やと思うで」
「あぁ、そうだな。あぁ君、すまないがこの二人を休めたいのだが」
マリアは体調の優れない二人、シャーリーとユリアに視線を向け、女性に休憩室へと連れて行かせた。
付き添いと形でシスコンのアリスも。
「で、マリアさんどうするんで?」
「一般市民に暴力を振るうのは好ましくないが、事態が事態だ。仕方ないだろう」
「でも、皆さん目が血走ってメッチャ怖かったんやけど」
「おいおい、ここで足止めくらったら。旅終わりだぞ?」
「! それはアカン! 全力で行かせてもらいます!」
扱いやすい奴で助かった。
「コウヘイ、ちゃんと加減して対処しろよ?」
「わーってるよ。罪もない一般市民を殺す趣味は持ち合わせてないんでね」
「なら、いいが」
本当に不安そうな眼で俺を見ないでくれ!
俺だって好き好んで人を殺めてるんじゃないよ!?
生きていく上で仕方ないからなんだ。うん。
「それよか、その黒フードってやっぱ泥棒の一味やろか?」
「そうだろうな、大かた私達の足止めといったところだろう」
「まぁこれは効果的だわな、こっちには王女様が居るからこの事態は見過ごせないし」
「ほぉー それは私が足手まといと?」
「いや、別にそういう意味では」
あー 怖っ、そんなに睨まなくてもいいじゃん。
「それで統括官、王都にはいつ救援を要請した?」
「いえ、それが。連絡がつかないのです、思いつく限りの方法を試したのですが」
と、表情を暗くする。
本当に頑張ったんだね、疲労の色が見える。
つうか王女が来るなんて微塵も思ってなかっただろうな、場が違う意味で緊張してる。
「報告!」
一般兵が隣室から駆けこんできた。
その瞬間、一般兵士君は場の雰囲気に呑まれて言葉を無くす。
気のせいか、顔色が悪い。
「なんだ。早く報告しないか」
マリア、たぶん貴女のせいで報告しようか迷ってるんだと思うよ。
「は、はい。気絶した民達が意識を取り戻しても、暴徒化しない事が判明、順次避難誘導をしているとの事です」
朗報だな、これで心おきなくやれる。
懸案事項が減った。
「殿下、指揮を?」
統括官が今の報告を聞いた上で、マリアに尋ねる。
「いや、貴様が執れ。私達は前線に出向く」
「かしこまりました」
「行くぞ」
「へーい」
「ワイは残りたいで~」
「はいはい、生意気言わないの」
俺はエセ関西弁を無理やり魔法陣の上にもっていき、魔力を流す。
―門前(内)―
「はぁ~ 来てもうた」
「死にはしないと思うから安心しろ」
「何ソレ! それは死ぬかもしれん可能性が―――」
エセ関西弁がこの期に及んでも弱気な言葉を連発するので、マリアの額に青筋が浮かび。
「今私に殺されるのと、死ぬかもしれない前線に行くのと、どちらがいい?」
怖い! 怖いよ! 黒いオーラー纏ってて魔王級の覇気ですよ!
エセ関西弁なんて足ガタガタ震わせてるし。
「行くぞ!」
「ほら、しっかり立て」
「怖いでぇ~」
俺はエセ関西弁を担いでもう一度跳躍する。
空か見た街は相も変わらず酷いありさまだ。
未だに暴徒と騎士団は衝突を続けていた。
中には子供の死体まである始末、エセ関西弁なんて「未来の可能性が~!」って絶望してた。
こいつ、ある意味大物になるかもな。
―予告―
第23話 エリーゼの暴動(鎮圧編)
コウヘイ、マリア、エセ関西弁はそれぞれ鎮圧戦を始める。全ては以前の様な活気ある街へと戻すため、そして各々の力を振るう。