17 王室からの招待状
俺の視線の先には、肩まで伸ばした赤髪に凛とした顔立ちの女性が一人。
騎士甲冑がよく似合う、騎士であり王族である人が威風堂々と立っていた。
「シャーリー、コイツが父上の言っていた男か?」
「え、えぇ。コウヘイ・タカバタ様です」
ふーん。と返事をし、品定めのような視線を俺に浴びせながら二、三回頷いて、
「よし、これなら問題ないだろう」
と納得したげに一人言葉を漏らす。
「何が問題ないんですか?」
「そりゃー 城に招くのにだ」
おぃぃぃ! それってあれか、お見合いか!?
ダメだ。行ったら物凄く不幸な事が起こる気がする!
地球で散々経験した俺の不幸アンテがビンビン反応してるんだもの!
「で、オマエ。なぜ逃げようとしている?」
バレタ?
あれー 忍び足で逃げようとしたんですけど、なんで解ったんですか?
「いや、何となく?」
「ほぉー 何となくで我々の招待を蔑ろにするのか、へぇー」
目が据わってる。
これ、やばくない?
「剣を抜け、やはり自分の目で評価せねばいかんようだ」
来たよ模擬戦フラグ。
いや、この場合は決闘か?
まぁとにかく、こうなっちゃったか。
「いいですけど、ルールは?」
「相手に負けと認めさせるか戦闘不能にするかのどちらかが勝利条件だ」
「解りました」
「で、貴様。何故剣を持たぬ? 私を侮辱しているのか?」
「いや、別に素手でも勝てるんですけど・あと名前なんて言うんですか? 王女様って言うのもアレなんで」
「そうだな。私の名前はマリア・セイント・H・シャールだ」
王侯貴族ってのは名前が長くて覚えにくい、どうになかならないのか。
まぁこの人の場合はまだ許容範囲だけど。
それより、剣構えてやる気満々オーラーだして、ほんと戦闘狂ですか?
「でも、まぁ。王族に敬意を払って武器を使いましょう」
「ほぉー」
あらら、額に青筋浮かべちゃって。
戦いでは頭は冷静に、心は熱くが基本でしょ。
ま、俺はどっちも冷静がモットーですけど。
さてと、いつもは神話なんかを参考にするけど……今回は完全オリジナルで行ってみますか。
イメージは負けなしの剣、創造するは聖人を超越せし剣。
「顕現せよ、"打ち負かす剣"」
顕現したのはチンピラが使う鉄パイプと差ほど変わらない刀身の剣。
派手な装飾はなく、戦う為の剣を思わせる一振りだ。
剣がいきなり出て来た事に少しは動揺の様子を見せるが、すぐに落ち着きを取り戻した。
さすが王族でありながら軍人になった人だ。
「どんな手品を使ったかは知らんが、そんな物で勝てるとでも?」
「もちろん、あと魔法も使ってもいいよ?」
「余裕だな」
「余裕ですから」
バチバチッ! と火花が散っているのが俺にもよくわかる。
さて、ここら辺で俺の実力ってのをある程度見せつけて、結構強い。って印象をみんなに植え付けるか。
「その余裕私がへし折ってくれる……ッ!」
剣戟を振るう両者。一合、二合と剣を交え、二人は間合いを開くため後ろに退く。
「なかなかやる」
「貴女もなかなか、王族とは思えないですよ」
「はっきり女とは思えないと言ったらどうだ?」
「いや、それは幾らなんでも失礼じゃ『構わん』……そうですか?」
「だが、負けるつもりはないぞ! 雷撃!」
剣を一振りすると、雷が俺向けて奔る。
速さは人に認識できる速度ギリギリだ。
そう、人には。
「あぶねっ」
人であり人を超える俺には普通に見えるんだよね。
あぁ、神様。
貴女には感謝しても感謝しきれない……かも。
「今のを避けるか、ならこれはどうだ! 走れ雷光!」
刹那、俺の全神経が警鐘を鳴らし、無意識のうちに縮地を発動し、光の速さで迫って来ていた一撃を回避する。
「これも、避けるか。お前本当に人間か?」
「一応人類に属するはずですけど」
っていうか、この人めっちゃ強いやん!
神様ヘルプ! ヘルプミー!
『出まして来まして 神様!』
……結構有名所で攻めて来ましたね。
『でしょ? 私結構好きなんだよね、あのアニメ』
俺は残念ながら世代が違うんで大まかな事しか知らないですけど
『一度見てみなって、一時代を築いたと言っても過言じゃないんだから』
はぁ、いやそうじゃなくて。シャーリー姉、あれ何者ですか!
『人間だけど?』
いや、雷光なんて普通の人間絶対使えないでしょ!
『そりゃー 彼女のオリジナルだし、一応彼女この世界では最強の七人の一角だよ?』
あんなのが他に六人もいるの!?
『まぁね。この世界の天使に加護を受けてるから、聖人って分類になるけど』
マジか
『マジ、マジ。でもコウヘイは神様の加護を受けてるんだから、聖人の五人や十人くらい』
ムリ、ムリ、俺基本臆病だもん! あの人雰囲気とかマジ怖いもん!
『私は最高神なんだよ、創造主とか大いなる母とか森羅万象の主とか言われてる私の加護があるんだよ!』
それでも怖いものは怖いし、性格はそうそう変わらないって
『む~』
でも、まさかそこまで偉いとは思いませんでしたよ。
『ふふん、敬いなさい、奉りなさい! 私は偉いのだ~』
(でも、なんでこんなに幼いんだ)
『いつの時代も子供心を忘れてはダメなんだよ』
人の心を勝手に読まないでください! あと、言いように聞こえるけど貴女はしっかり大人になってください!
『む~ まあがんばって、勝てない事はないんだから。じゃ』
「信じられん、だが私と同類ではないのは確かだろう」
「まぁ天使の加護は受けちゃいませんけど」
「なら悪魔の加護でも受けているのか?」
「…その悪魔を先日倒しちゃったんですけど」
「あぁ、そう言えばそうだったな。それにしも、本気で戦えないのが非常に残念だ」
今のでも本気じゃない!?
こぇぇぇ、この人マジ半端ない!
しかも、黒い笑み。
この人また挑んでくる気満々マン!?
「隊長、こちら来た目的を」
「ん? あぁそうだな」
一人の騎士に言われて思い出したかのように騎士から手紙を受け取り。
「王族(我々)からの招待状だ。受け取るといい、『七班』諸君」
「「「「はい?」」」」
―予告―
第18話 王国の秘宝
王都へとやってきた一同、王城にて待つのは険しい試練への誘い、そして―――