16 転入生は王女様
本当に転入してきたよ、あの王女様。
いや、シャーリー。
転入そうそう俺に声かけてきて学校中の男子は俺に殺せそうな視線向けるわ、女子には少し引かれるわ、教師陣には粗相のないようにと作法を強制的に習わされるわで、もう俺の学生生活は一変。
ただ唯一の息抜きと言えば、ユリアとのお茶くらい。
「はぁ」
「どうしたんですか?」
「あぁ、ユリア。唯一の癒しはお前だけだ」
「ふぇっ! え、えぇーと」
頬赤らめて可愛いな~
あぁ、見てるだけで癒される。
「コウヘイ、見つけましたよ!」
「あー 何だよシャーリー、俺は今ユリアから癒し成分補給中なんだけど」
「むっ、なら私からもその癒し成分とやらを補給してください!」
「無理、無理。お前から補給できるのは心労成分だけだ」
「そ、そんな事はありません! 胸だってあるんですからっ!」
まぁ確かにあるにはあるな、んっ?
あー ユリア、お前はそれでいいんだよ。
だから、気にするな。
大きさだけがすべてじゃない、小さくたっていいじゃないか。
需要はあるさ、きっと。
俺はどっちでもいいけど。
「そんな事よりいいのか? 確か用事があるとか何とか言ってたろ?」
「えぇ、まぁそうですけど。そんな事よりコウヘイの方が重要です!」
「? そうか、そりゃー 嬉しいな友達として」
ガーン!
という効果音がなぜか聞こえた。
なぜだろう?
そしてユリア、何故そんな勝ち誇った顔をしているんだ?
「シャーリーさん、そいう事なのでどうです? 一緒にお茶でも」
「なっ! うぅぅ~ ご、ご一緒させてもらいます」
「どうぞ」
何でだろう、あんないい笑顔を浮かべているのに、ユリアが怖い。
「で、何で俺にひっついてるんだ?」
「気にしないでください」
気にするって!
なんか当たってるから、それにユリアが怖いから!
これは、あれか!
いつの間にかフラグでも俺は立てたんですか!?
そんな覚えはないぞ!
(やれやれ、ホント貴方は鈍いですね。まぁそこもいいですけど)
(う~ この人は敵だ。コウヘイさんは私が……ッ!)
この表情、間違いない……フラグが立っとる!
えぇい、なんとかせねば。
それともいっその事どちらかに告るか?
いや、それじゃあどちらかが……どうする、どうする俺!
「どうかしましたか?」
「顔色が優れないけど、大丈夫?」
「あ、あぁ」
君たちが原因だよ。 とは言えないな。
う~ ユリアに告ればアリスに殺され、シャーリーに告れば国中の男共が敵に、
どちらも地獄……マジでどうしよう。
ん? 待てよ、別にこの二人だけに絞らなくてもいいじゃないか。
別の誰かという手も、ある!
よし、希望が見えた!
「それにしても、まさか王族が騎士学校に来るなんてな」
「そうですね、確か史上初めてだとか」
「ま、まぁ騎士になろうという王族はこれまで誰もいませんでしたから」
「よく王様とか説得できたな」
「お父様もお母様も私には甘いんです」
「それは少し不安だな」
あはは。と笑って誤魔化すな、将来はお前が―――
「将来は、お前がこの国の元首だよ、な?」
「いえ、お姉さまですけど」
「姉さんが居るの?」
「はい、今は軍に所属してますけど」
軍人! ヤバイ、会ったら模擬戦フラグ!
いや、案外向こうから来るかも……。
「シャーリー! お姉さんは俺の事知らないよね!?」
「い、いえ。父が自慢げに話してましたから、いずれ儂の息子になる男だ。って」
おぃいぃぃぃぃ! 王様ぁあぁぁぁぁ!
それ受け取り方次第では、お前の婿になる男。って受け取りかねないだろぉがぁぁぁ!
来るよ、これ来るパターンだよ。
どうしよ、どうしよ、どうすんの俺ぇぇ!
「探したぞ! シャーリー」
「あっ、姉さま」
「……来ちゃったよ」
「「?」」
『あはっ、面白くなってきた~』
―次回予告―
第17話 王室からの招待状
やってきた次期女王、携えて来たのは悪魔の誘いか、それもとも―――